普段着に和服を取り入れて半年
はじめに断っておくと、以下はすべて男物の話である。
「普段着に和服を取り入れて 1 ヶ月」を書いてから 5 ヶ月が過ぎた。その間、和服を着ること週 2 回のペースを維持している。秋から冬にかけて新たにそろえるものもあったので再びここに書き留める。
秋
9 月半ばから 10 月半ばまでは、綿麻浴衣、襦袢代わりのスタンドカラーシャツ、肌着として半袖 T シャツという格好で過ごした。下はステテコ着用である。
10 月半ばともなるとそれでは肌寒くなってきたので、浴衣をやめてウール単長着 (先の記事で述べた古着) に替えた。寒さ対策にはまず首周りからということで、11 月くらいからはマフラーもするようになった。巻き方は後ろ結びだ。
11 月に入ってから長着とセットになっていたモスリン長襦袢を引っ張り出したのだが、屋外ではかえって寒く感じたのでスタンドカラーシャツに戻した。何が寒いかといえば袖口から入り込んでくる冷気である。先の記事に書いたように私は夏場でも冷房の効いた屋内では長袖を羽織るくらいで、二の腕に寒気があたるとどうもダメなのだ。夏場は常に長袖を羽織っている気分だったのが、冬場になると一転、常に半袖でいるような気分になってしまう。
その点、襦袢代わりに長袖スタンドカラーシャツを着れば、シャツの袖口で冷気がシャットアウトされるので、多少冷えた日でも快適に過ごせる。衿元が乱れていないかという心配も軽減する。もともと長襦袢よりも安く、入手しやすく、洗濯もしやすいだろうと選んだスタンドカラーシャツだが、なかなかどうして優れものであった。
また、木綿の着物もあれば秋・春に使えるかと、古着屋のネットショップで黒の木綿単長着を買った。しかし、実際に羽織ってみるとどうも僧衣のように見えてしまい、これは寝巻きにするしかないかなと思っている。洋服にせよ和服にせよ黒は難しいと痛感した。
冬
11 月も半ばに差し掛かってくると、さすがに長着のままで外を歩くのがつらくなってくる。着物用のコートが必要かと悩んでいたが、たまたま街を歩いているときにきもの文化祭のポスターを見かけて行ってみたところ、フリーマーケットにとんびコートが出ていたので購入した。
とんびコートは腕をすっぽり覆う肩掛けがついているので、長襦袢着用時も袖口から冷気が入ることなく外を歩ける。古着ということでサイズは合っておらず、丈がだいぶ長いのだが、その分冷気も入りづらいし、新品のお値段を考えればこれで大満足だ。
コートを入手してからはウール単長着、モスリン長襦袢、綿 V ネック T シャツ、下にはステテコという組み合わせでいる。この時代屋内はどこも暖房が効いているので、袷でなく単でも普段過ごすのに問題はない。
肌着に使っているのはユニクロの綿 V ネックインナー T シャツだ。先の記事では油断すると衿元から覗いてしまうと書いたが、サイズが大きめのものを買い、着付けた後に襦袢の内側から手を入れ T シャツの襟をぐっと下げることで、その点は解決できた。半袖インナーなので肩が落ちていようと構わないという判断だ。万が一覗いてしまっても暗色の着物と違和感ないよう、色は黒を選んでいる。
冷え込みのきつい日は長襦袢をタートルネックセーターに替え、ステテコの下にさらにヒートテックタイツをはいている。私の場合二の腕と同様太ももも冷えると具合が悪くなるので、和服のときは常にステテコ着用だ。
足袋は夏から同じストレッチ足袋を使い続けているのだが、冬場となるとさすがに厳しい。歩いていればまだ気が紛れるが、屋外で立ち止まると足先からどんどん体温を奪われていく。冬の足元はどうしたものだろうと思っていたところに「ヒート + ふぃっと」という足袋インナーと出会った。足袋の下にはくことで、ポカポカとまでは行かないまでも体温の奪われる感覚が劇的に軽減される。この時期の外出になくてはならないと存在となった。
帯結び
帯は最初こそ貝の口に結んでいたものの、椅子に座る機会が多いので出っ張らないほうがいいと片ばさみに替え、今はそれ一辺倒だ。
履物
履物は浴衣セット付属の下駄か、かかとのついたサンダルを使っていたが、10月ごろ、タイル敷きの歩道で浮き出たタイルに蹴つまづいた拍子に下駄の歯が欠けてしまった。そこで、店頭に浴衣やら足袋やらを並べていたお店に入り、「雪駄はありませんか」と尋ね、どういうものをと聞かれたので「街歩きに使えるような」と答えたところ、このあたりが安いでしょうと出された雪駄を購入し、以後はずっとそれを使っている。
私の場合は映画館にもよく行くので、下駄よりも音の小さい雪駄のほうが向いているのだろう。最初は鼻緒の人差し指横側にあたる部分が硬くて痛かったのだが、1 ヶ月も履いていれば慣れてしまった。下駄雪駄には左右がないそうなので、履くたびに左右を入れ替えている。
トイレ
座って用を足す際にはお腹をへこませて帯を持ち上げるが、問題はそれを戻すときだ。和服を着始めた当初は帯の上方から押し下げていたが、帯の下方から引き下げると着崩れしにくいことに気づいた。これは自分の中では結構大きな発見だった。
洗濯
先の記事に書いたように着物用洗濯ネットと中性洗剤を使い、洗濯機のドライコースで洗っている。洗うタイミングはすごく汗をかいたなと思ったときや、天下一品のラーメンを食べた後など、大体の頻度としては長着が 2 ヶ月に 1 回、長襦袢が 1 ヶ月に 1 回といった感じである。
足袋は洗濯ネットに入れて洋服類と一緒に洗い、裏返しにして干している。
裁縫
11 月半ばから使っているとんびコートであるが、気づいたら裾がほつれて布の端が垂れ下がってしまっていた。コートのほかの部分を見ても縫い目が見えず、どう縫ってあったのかさっぱりわからなかったが、「裾 縫い方」でググったところ千鳥がけというのが適しているようなので、似た色の糸を買ってきて縫いつけた。不慣れなもので縫い目の間隔も一定せず、140 cm ほどを縫い合わせるのに 1 時間かかった。
長襦袢も洗濯機での丸洗いのせいか裾がほつれたので「和裁 縫い方」でググり、こちらは三つ折りぐけで縫いつけた。しかしこれが難しく、120 cm ほどを縫い合わせるのに 2 時間を要した。
また、和服のまま横になって寝込んでしまったとき、寝返りを打った拍子に長着の後ろ身頃と袖の縫い目がビリッと音を立てて 5 cm ほどほつれてしまった。これには慌てたが破れたものは縫うしかないと、裏側から本ぐけで縫い合わせた。最初は縫い目の間隔を 6、7 mm くらいにしたのだが、隙間が見えるようだったので 3 mm くらいの間隔で重ねて縫った。
イベント
前述のきもの文化祭について調べるうちにキモノジャックというイベントのあることを知り出かけていったり、着付け講師をされている知人が古着屋巡りツアーを開くというので参加させてもらったりした。こうしたイベントで質問なり何なりすることで、男物の多い古着のお店だの、冬の足元には別珍の足袋や足袋カバーを使うだの、いろいろ教わった。
そうした場で周りを見渡すと、やはり袖口が冷えるのか、長袖 T シャツを着込んでいたり、女性だとアームウォーマーをしていることも多い。また、中華料理店で着物の女性がどこからともなく (懐から?) 手ぬぐいを取り出し、衿にはさんでナプキン代わりとしてたのには、これが着慣れた人の所作かと感心した。
経費
先の記事より後にかかった費用は下表のとおり (送料は除く)。
雪駄 | ¥1,300 |
木綿単長着 (古着) | ¥2,100 |
とんびコート (古着) | ¥7,000 |
綿 V ネックインナー T シャツ (2 枚組) | ¥990 |
縫い糸 | ¥178 |
角帯 (古着) | ¥3,045 |
足袋インナー (2 足) | ¥550×2 |
麻長襦袢 (古着) | ¥4,200 |
木綿反物 | ¥9,000 |
計 | ¥28,913 |
---|---|
先の記事との総計 | ¥50,829 |
これから
現在は着るのにかかる時間も 5 分ほどとなった。帯の長さ調整に手間取るともう 2、3 分かかってしまうので、しっかり長さの検討をつけられるようにしていきたい。
先の記事で麻の長襦袢がほしいと書いた後、ネットショップで裄・丈が気持ち長め、洗濯で 1、2 cm 縮めばちょうどよくなるくらいの麻長襦袢があったので買ってみた。もう少し暖かくなったら実際に着てみたい。
春になれば木綿がいいのではと思って古着を探していたが、木綿で男物となると古着ではそもそも数がなく、いっそ反物から仕立ててはと勧められた柄が一目で気に入るものだったので、思い切って誂えに挑戦してみることにした。仕立ては知人に紹介していただいた和裁士の方に頼むつもりでいる。
今後も古着であれ誂えであれ自宅の洗濯機で洗えることを第一とし、週 2 回、平日 1 回休日 1 回のペースを習慣化して和服を着ていきたい。
追記: その後
今年一年の楽しみを振り返る 2012
去年立てた今年の抱負に「大型のテレビを買いたい」というのがあったが、果たせなかった。去年に引き続き映画に費やした時間が大きい。
映画
ヒミズ
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ねらわれた学園
『桐島〜』が経験に即して「正しい青春」ならば、こちらはアニメ・マンガの世界において「正しい青春」とでも言うべきか。新学期に好きな子と同じクラスになる、家が隣同士で部屋の窓が向かい合わせの幼馴染、女の子の傷ついた理由がわからない鈍感な男の子など、おなじみの甘酸っぱい展開が光あふれる景色とともに繰り広げられる。ベタな話の好きな自分は終始口元が緩みっぱなしだった。
ふがいない僕は空を見た
高校生とコスプレを趣味とする主婦との不倫が巻き起こす話。コスプレセックスのシーンから始まるが、「こんなの (コスプレ) 何が面白いの」と問われた主婦が「現実見なくていいから」と即答するあたり、「オタク」には優しくない。登場人物が苦悩し追い詰められていく中で、我関せずとばかりいる主婦の夫や、自覚していない悪意を主婦にぶつける主婦の義母の姿が異様に映る。
洋画のほうが観た数は上の気がするのだが、結果として印象に残ったのは邦画が多い。上記作品すべて主人公が中高生以下というのが私の趣味を表しているように思う。
これ以外では、ナチスドイツとユダヤ人に関する『サラの鍵』『ソハの地下水道』や、「20 秒の勇気」がお気に入りの『幸せへのキセキ』、そして圧巻のミュージカルである『レ・ミゼラブル』がよかった。『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』ではカヲル君を堪能した。
今夏の話題作として『おおかみこどもの雨と雪』があるが、個人的にはもやもやの残る作品だった。
まず、主人公である花が「つらいときも笑う」ことを信条としている点。私も気の落ち込んだときには笑い顔を作ろうとするのだが、それは花のように「笑っていればいいことがある」という前向きな理由からではなく、「泣いていてもどうしようもない」という後ろ向きな理由からだ。さらに、自分の中でも「泣いていてもどうしようもない」ということに疑いを持っており、泣きたいときには泣くべきではないかと考え、またそのような作品を好む。「つらいときに笑う」人物にはどうしてもそれでいいのかという思いが胸をよぎってしまう。
花が児童相談所の職員を追い返す場面も個人的には悲しかった。セーフティネットが、たとえ本人の拒絶が原因だとしても、セーフティネットとして機能しないという姿は見ていてつらいものがある。
また、田舎に移ってからの花の奮闘ぶりを見て、これは個別例として褒めこそすれ、決して子育ての理想や手本にしてはいけないと感じた。子育ては花のような「超人」でなくともできるものであってほしい。花の重ねた苦労、感じた苦しみを、子育てする人が追体験することのないような社会になってほしいと思う。
同様に、終盤で花が雨に投げかけた言葉も気にかかった。そんなことはない、あなたは十分に物事を成し遂げた、どうか胸を張ってほしい、あれでまだ何もというのであれば何かできる人はこの世にいなくなってしまう――と (自分のエゴではあるが) その場で声をかけたくて仕方なかった。
気になった点をあげつらったが、作品そのものは面白く、特に雪と雨の小学校生活の移り変わりを廊下から捉えるシーンは印象深い。
ライトノベル
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東雲侑子は全ての小説をあいしつづける
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紫色のクオリア
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『紫色〜』と同様に以前の刊行だが今年読んだものとして『空色パンデミック』がある。こちらは SF ではなくメタフィクションだが、どこまでが真実かわからない仕掛けの連鎖にしてやられた。中世ヨーロッパ風の世界で科学者としての錬金術師を描いた『マグダラで眠れ』も続きが気になるところだ。
マンガ
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ひとりぼっちの地球侵略
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アニメ
『あの夏で待ってる』『TARI TARI』『ブラック★ロックシューター』など、中高生の青春を陰も含めて描いた作品がよかった。特に『あの夏〜』の柑菜の「禊」が記憶に残っている。
来年の抱負
積読解消・書架整理
普段着に和服を取り入れて 1 ヶ月
はじめに断っておくと、以下はすべて男物の話である。
きっかけ
京都という土地柄か、着付けのできる人や呉服屋に勤めている人と知り合うことがある。和服はいいよと勧められもしたが、自転車に乗れないのは困るとかトイレが面倒そうだとか言って話から逃げてきた。しかし、よくよく今の状況を考えれば、勤務先は服装規定もなく各自自由な格好で来ているし、家も会社も京都市内で公共交通機関も発達している。ここで普段着として和服を着なければ、一生普段着として和服を着る機会はないだろうと思い至った。身体的精神的に健康と言い切れず逃避先を求めていたこともあり、普段着に和服を取り入れようと決意したのである。
浴衣の入手
購入に踏み切ったのは 7 月であり、時期的にも入手しやすさからもまずは浴衣だろうが、店頭で実際に袖を通して買うかネット通販で済ませるか。迷ったものの最後に背中を押すのは深夜のテンションということで、その時間にも受け付けているネットショップの浴衣セットを購入した。下駄や信玄袋も込みで、とにかくこの一式を買えば上から下まですべて大丈夫という気軽さが決め手だった。
着付け
着付けに関しては「浴衣 男」「浴衣 帯」といったキーワードでググればいくらでも解説が見つかる。帯の締め方はアニメーション GIF で解説しているところがわかりやすかった。男の浴衣の着付けでややこしいのは帯だけだが、それも 3 回も練習すれば何とかそらで締められるようになる。
既製品なのである程度は仕方ないがどうにも浴衣の丈が長く、水洗いしたら多少は縮んだもののまだ長いので、3 cm ばかりおはしょりを作り帯の下に隠している。これがあるのでちょっと手間取ってしまい、今現在は着るのに 10 分ほどかかっている。
肌着はユニクロの綿 V ネックインナーを使っているが、着崩れてくると襟元から覗いてしまうことがあるので、もっと襟ぐりの広いものがよいかもしれない。9 月に入ってからは、後述する書籍の影響で丸首 T シャツを襦袢代わりとしている。当初下着はトランクスだけだったが、椅子に座ると浴衣と太ももがじかに接するのが気になり、ユニクロで無地のステテコを買ってきた。
外出
普段は自転車通勤だし休日出かけるときも自転車がメインだが、浴衣を着るとそうもいかないので公共交通機関か徒歩となる。京都市バス一日乗車券は常にストックしておくことにした。下駄を履いて歩くと靴のときと比べて所要時間が約 1.2 倍になる。徒歩は自転車の 3 倍の時間というのが私の中での目安なので、自転車で 10 分の距離なら浴衣のときは 30 数分歩く計算だ。
浴衣セットの中に信玄袋もあったのだが、こちらは柄があまり好みでなかったので、オープンソースカンファレンス Kyoto でもらった小ぶりのトートバッグを使っている。和服というと袂からがま口でも取り出すイメージがあったのだが、実際のところ袂に入れられるのはハンカチやティッシュがいいところで、財布やケータイなど重みのあるものを入れると袖の動きが変になる気がする。今のところは左の袂にティッシュ、右の袂にたすきがけ用の腰紐、それ以外の持ち物はトートバッグという形に落ち着いている。
時間を見るのにいちいちケータイを取り出すのは面倒だし、アナログ表示のほうが確認しやすいので、洋服のときは腕時計をはめている。しかし、和服に腕時計をはめると袖口が引っかかって切れてしまうこともあるらしいので、腕時計もバッグに入れっぱなしだ。これはやはり面倒なので、そのうち懐中時計を入手したい。懐中時計紐を使えば今よりは確認しやすくなるのではないかと思う。
雨具のことは何も考えておらず、雨の日は洋装にすると決めている。
トイレ
普段着にする以上トイレの問題を避けることはできない。用を足す前に帯を解くのは洋服で用を足す前にベルトを外しズボンを下げるのと同じという意見はもっともだが、やはり面倒くさく感じてしまうので、帯を解かずに上にずらし用を足した後に着崩れを直している。たすきがけをしておくと安心感が高まる。
とはいえ、どうにも崩れが激しく帯を結びなおすしかないというときもある。床につけないよう帯を解く端からトイレットペーパーのように丸め、その状態から結びなおす練習をしておいて損はない。それでも和式トイレやふたのついていない洋式トイレでは怖くてできないが。
洗濯と収納
浴衣を普段着にするにあたって一番調べたのは洗濯のことだ。何せ毎週着るのである。そのたびにクリーニングに出したり手洗いするだなんて面倒くさくてやってられない。家の洗濯機で洗えるのは絶対条件だ。(面倒くささは実際の労力よりも習慣化されているかによるところが大きい。クリーニングをほとんど利用しない私にとっては、洗濯機で洗って干し畳むよりも、クリーニング屋に預けて取りに行くほうが面倒くさい。)
洗濯機で洗う際には襟をしつけ縫いするそうだが、それすら億劫と思っていたところ着物用の洗濯ネットがあることを知った。たたんだ状態で固定して洗えるので大きく崩れることがない。ネットに入れて中性洗剤を使いドライコースで洗っている。
洗濯後は裏返して着物ハンガーにかけ干している。干すとき襟や前身ごろを叩いてしわを伸ばしはするが、面倒さが先立ってアイロンがけはしていない。しわが気になるときは本だたみにして寝押ししている。寝押しもググればござをかけてだのビニールコーティングされた布に包んでだのというが、そうした布もないので変な汚れがつかないようゴミ袋に浴衣を入れ、下にダンボールを敷いた状態で布団の下に挟んでいる。
勤務中は冷房の効いた部屋で座りっぱなしだし、公共交通機関も冷房がかかっているが、どうしたって外を歩く場面は出てくるし夏に歩けば汗をかく。かといって頻繁に洗濯しすぎてはすぐに布が痛んでしまうだろうから、2、3 回着たら洗濯するようにしている。
どうも不精なたちなので 1 回着たら次着るまで着物ハンガーに掛けっぱなしだ。後述するように別の着物を買ったが、こちらは着れる時期がまだ先なのでしまいこんである。といっても桐のタンスなんてないしクローゼットもしょっちゅう開閉して気密性がないから、本だたたみにしてたとう紙で包み、さらに両端から防虫剤同封のゴミ袋をかぶせてクローゼット内に寝かせた状態だ。本だたみのやり方は動画での解説がわかりやすかった。
デメリット
夏場に浴衣で過ごして一番気になるのは、細かな温度調節ができないことだ。私は普段屋外では T シャツ 1 枚でも、冷房の効いた屋内に入れば長袖シャツ (腕をまくりはするが) を羽織るようにしている。浴衣はいってみれば肌着の上に常に長袖を羽織った状態なので、屋外ではどうしても暑く感じられる。
男物ですらそうなのだから、おはしょりを作ったり補正にタオルを入れたりする女性の場合はなおさらだろう。浴衣は涼しそうに見えても決して無条件に涼しいものではないというのが着てみた実感だ。とはいえ、扇子で袖口から風を送ると脇や横腹の辺りまでひんやりしてきて、これはこれで気持ちいい。
また、ポケットがないので小物の持ち運びに困るというのもある。移動中はバッグに入れていても困らないが、ちょっと席を立った折にケータイを忘れていたということはよくある。たもと落としや和風ウエストポーチというのがあるそうなので、それらを使うのもひとつの手かもしれない。
参考
和服を普段着とするのにネット上でいろいろと調べ物をしたが、中でも参考になったのは以下のサイトだ。
- Kimono-Wa-fuku:きもの-わ-ふく
- 普段着としての着方やトイレ歩き方座り方のコツなど、平時和服を着るための要項が充実している。読み物としても面白い。
- 男だって、着物がきたい。
- 「ふだん着物のススメ」、とりわけ「自分のサイズを知る」の簡易な測り方が2着目を買うのに役立った。
和装小物のお店で「まだ和服のことを全然わかってなくて」と言ったら、『男のふだん着物』という本をおすすめされた。早速読んだところ、フォーマルな場では洋服、和服は普段着と割り切った上で、襦袢代わりに T シャツやタートルネックセーター、足元も場合によってはスニーカーやサンダルで OK と説いている。こんな着方で大丈夫だろうかとつい萎縮してしまいがちな身にとっては、非常に勇気付けられ気の楽になる本だ。後から知ったが同じ著者による新しい書籍もあるので、そちらでもよかったかもしれない。
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経費
和服を普段着とするため現在までにかかった費用は下表のとおりである (送料を除く)。和服は高価というイメージを持つ人もいるようだが、古着を利用すればそうでもないように思う。
浴衣セット (綿麻浴衣、綿角帯、下駄、腰紐、信玄袋、扇子) | ¥6,480 |
古着着物アンサンブル (ウール単長着、ウール羽織、モスリン長襦袢) | ¥2,100 |
綿スタンドカラーシャツ | ¥3,900 |
綿 T シャツ | ¥790 |
腰紐 (2 本) | ¥190×2 |
ステテコ (2 枚) | ¥790×2 |
ストレッチ足袋 | ¥1,780 |
ストレッチ足袋 | ¥1,380 |
着物ハンガー | ¥880 |
着物用洗濯ネット | ¥850 |
中性洗剤 | ¥298 |
防虫剤 | ¥598 |
書籍 (男のふだん着物) | ¥900 |
計 | ¥21,916 |
---|
これから
秋になると襦袢なしでいるのもどうかと思い、古着も扱うネットショップで長襦袢付きの着物セットを買った。しかしモスリン地の長襦袢で、羽織ってみたところ寒くならないと着れなさそうだったので、とりあえずこの秋は T シャツやスタンドカラーシャツを襦袢代わりにして過ごすつもりでいる。来春まで意志が継続していたら麻の長襦袢を入手したい。
袴にズボンクリップを使えば自転車に乗れるかもと思ったが、袴は家で洗濯できるようなものではないらしいので当分そろえるつもりはない。
今は週に 2 日、平日 1 回休日 1 回のペースで和服を着ている。手持ちからいってもこのペースが限界だろう。伝統だ決まりだととらわれることなく、自分の着やすいように着ていきたいと思っている。
追記: その後
今年一年の楽しみを振り返る 2011
映画に費やす時間が増え、他メディアにはあまり触れていない。
アニメ
7月に地上デジタル放送への完全移行がありテレビ大阪が見られなくなると悲観していたが、『夏目友人帳 参』はじめ多くの作品がWeb配信で見られたこともありそこまで困らなかった。視聴時間の減少もあり、原作付きアニメは(特に原作既読なら)積極的に見なくてもよいかなという気分になっている。
- 輪るピングドラム
- どう転がるのかまったく予想のつかない展開に引き込まれた。ベタな恋愛ものが好みなのもあってだんだん苹果ちゃんと晶馬に肩入れするようになり、最後に列車の連結器が切り離される場面では思わずため息が漏れてしまった。
- 魔法少女まどかマギカ
- 最初は周りが話題にしているのでという感じだったが3話から一気に引き込まれた。大体3話までで最後まで見るか決めるので、シリーズ構成の妙にやられた感じである。
- あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。
- 作品に触れるタイミングというものを意識させられた。『絶対少年』という引きこもりの少年少女を主人公にすえたアニメがあり、私はこれを自分自身半ば引きこもっているときに見て多大な影響を受けた。あの花もその時期に見ていれば自分の中でそういう位置づけに立っていたかもしれない。
- 放浪息子
- 懸命に考えて行動しているはずなのに周りとすれ違っていく千葉さんの姿が中学時代の自分と重なり、それだけに最後の千葉さんの言葉と表情が喜ばしく感じられた。
- GOSICK、ダンタリアンの書架
- 両作品とも近代ヨーロッパの雰囲気がよかった。
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『狼と香辛料』『GOSICK』が嬉しい最後を迎えてくれた。『涼宮ハルヒの驚愕』は出たことにも内容にも驚愕した。新作は東雲侑子〜以外に2、3作読んだくらい。当面は新作よりも積読解消に力を入れたい。
マンガ
特に新人、新作に触れていない。以前から継続して読んでいる『魔法使いの娘ニ非ズ』『高杉さん家のおべんとう』は相変わらず面白い。映画を見た後に読んだ『コクリコ坂から』は懐かしい香りのするよい少女漫画だった。
映画
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コクリコ坂から
ベタな恋物語も好きならば「青春は走ってなんぼ」とも思っている私にとって、どストライクの作品だった。
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午前十時の映画祭
往年の名画を週替わりで上映する企画であり、新作と並べるのもいかがなものかと思ったので別枠を設ける。
サウンド・オブ・ミュージック (2枚組) [Blu-ray]
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パブリックドメインとなっており、ニコニコ動画でも見られる。
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- 出版社/メーカー: IVC,Ltd.(VC)(D)
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来年の抱負
現在は15インチアナログブラウン管テレビで番組を視聴しており、下手するとWeb配信のほうが画質がよかったりするので、大型のテレビを買いたい。そして何といっても積読解消。
*1:『ここはグリーン・ウッド』の影響が大きいと思う。
*2:『リトル・マーメイド』から始まる主に90年代のディズニー長編アニメーション作品群 http://en.wikipedia.org/wiki/Disney_Renaissance
はてなインターン前の思い出
こんにちは、はてなでアプリケーションエンジニアをしているnanto_viです。この日記はHatena::Staff Advent Calendar 2011の一環として書いています。Advent Calendarの会場ははてなブログとなっていますが、主催のid:antipop (以下id表記をもって敬称に代えさせていただきます)にダイアリーでもいいかと尋ねたところ、何でもよいというような返答があったのでダイアリーで書きます。
はてなインターンを経由しはてなで勤めるに至った私ですが、そのはてなインターンに応募しようと決めたのはGoogle技術講演会in京都の会場だったと記憶しています。決心とは別に、講演会後に開かれた勝手二次会でid:naoyaの隣席に陣取り挨拶を交わしました。私の記憶はだいぶ偏っており、他人が何を話したかは覚えていませんが、自分が話したことはいくらか思い出せるのでここに掲載します。
私は中一のときまで「足がつる」ことがありませんでした。なぜかといえば、「足がつる」というのがどういうことか知らなかったからです。「足がつって溺れそうになる」といった文章を見聞きするたびに、足がつるとはどういうことなのだろうと不思議に思っていました。
中一の夏、川遊びの最中に足の裏が痛くなり、それを人に訴えたところ「足がつったの?」と訊かれました。そのとき初めて私の中で「足がつる」という言葉と実際の体の痛みが結びつき、足がつるとはこういうことなんだと納得したのです。思えば同じような痛みは以前にも体験したことがありました。しかし、それを「足がつる」という言葉と結び付けられなかった当時の私にとって、それは「足がつる」ことではなかったのです。
このほかにも、小学校の低学年まで音の高い低いという概念を音の大きい小さいことと混同していたという話をしました。そこから察せられるとおり私には絶対音感はおろか相対音感すらなく、中学の音楽の授業でギターの調弦に失敗した話や、1000点満点の得点付きカラオケで二桁を取った話など、音感に関するエピソードは枚挙に暇がありません。
閑話休題、そのようにid:naoyaと話す機会を得られたのも、勝手二次会に誘っていただいたid:nitoyon、TwitterでGoogle技術講演会開催の情報を流していただいたid:hanazukin、そもそも技術講演会を京都で開いていただいたGoogleの方々など多くの人の縁によるものであり、今の私をなさしめるヒト・モノ・コトのつながりに感謝する次第です。
明日はid:cauchymです。
道東一周の旅
10月に北海道、主に道東を旅してきました。北海道は広く、食べ物のおいしいところでした。
移動日(行き)
京都から北海道に行く手段として真っ先に思い浮かぶのがトワイライトエクスプレスです。初乗車だったので始発大阪から乗り込みました。
昼食
昼食はトワイライトエクスプレスの食堂車でオムライスと海老フライ サラダ添えを注文。オムライスは最近よく見るトロトロタイプではなく昔ながらフワフワのもので、バターの香りが効いていました。海老フライのエビも身が締まっており、琵琶湖の景色と合わせて大満足です。
道内2日目
滝川から釧路まで300kmを8時間、走行距離日本最長の定期普通列車2429Dに乗り、根室本線を走破しました。
朝食
宿での朝食。おかずの種類が多くおいしかったです。
昼食
池田駅の駅弁「十勝牛のワイン漬けステーキ弁当」。駅弁とは言いますが駅構内に売店があるわけではなく、駅前の「レストランよねくら」にあらかじめ注文しておくと、列車停車中に車両の乗降口へできたてを届けてくれるというもの。柔らかく肉汁たっぷりのお肉がミディアムに焼けて食べでは十分。列車内で温かいステーキが食べられるとは鉄道旅行冥利に尽きます。
道内3日目
日本最東端の駅、東根室駅から出発。釧網本線を走り、途中2駅で駅構内の足湯に浸かりました。
朝食
昨日のバナナ饅頭の残り。冷えてもおいしいです。
昼食
釧路は和商市場での「勝手丼」。ご飯を買い、市場内の店で好きな海鮮ネタを入れてもらいます。お店の人のおすすめも交えてタンタカ、時鮭、ヒラメ縁側、鯨、マグロ大トロ、ウニを選択。とろける甘さのウニに時鮭、大トロも口の中でとろけて絶品でした。
夕食
釧路駅で買った「くしろさんぼう寿し」。脂の乗った秋刀魚を酢飯ががっしり受け止め、昆布が優しく包み込みます。アクセントの生姜も効いていて、一本丸ごとのボリュームも満天。日本に生まれたことへの感謝が止まらなくなる味でした。
道内4日目
1日2本しか列車の止まらない秘境駅、石北本線上白滝駅に寄りました。行き帰りとも列車というわけにはいかないので、隣駅から40分ほど歩いての到着、そのまま上白滝駅での最終列車に乗って去りました。
朝食
遠軽駅の名物駅弁「かにめし」を食べようと思っていたら、なんと調製元が火事で当面休止とのこと。仕方なく車内販売で網走の「帆立弁当」を購入しましたが、これはこれで甘辛く味付けされたホタテがごろごろ入っていておいしかったです。
夕食
旭川のラーメン店「一蔵」で「一蔵ラーメン 正油」をいただきました。それ自体はあっさりした感じでしたが、ほかにもさまざまな種類のラーメンがあったので、店全体がそうかはわからないです。
道内5日目
移動日 (帰り)
まとめ
親の教え「旅先で食費はケチるな」を守ることで、よい旅ができました。
その他写真
番外: お土産
道内最終日、札幌駅で2時間ほど余裕があったので地下街をうろうろしていたら、エスタ大食品街で六花亭とロイズの店舗を発見。悩んだ末に六花亭の板チョコと六花のつゆ、ロイズのポップコーンチョコレートとフルーツバーチョコレートを購入しました(手で持ち帰るので生チョコは断念)。中でも六花のつゆ(ブランデーボンボン、ワインボンボン、梅酒ボンボンなどボンボン詰め合わせ)がおいしく、評判もよかったです。
番外: トワイライトエクスプレスのチケット確保まで
個人でJRのチケットを取れるのは、1ヶ月前の午前10時からとなります。トワイライトエクスプレスの切符(特急券、寝台券)を確保すべく、第1希望B個室、第2希望B寝台(開放寝台、廊下との仕切り扉がない)で近畿日本ツーリスト、日本旅行、JTBの3社に発券を依頼。さらに自分でもみどりの窓口に並んでその時刻を迎えると同時に発券を試みてもらったのですが、あえなく全滅してしまいました。
4日後、当初予定2日遅れの列車のB寝台が取れ、旅程変更も考えましたが、その翌日、キャンセル待ちに変更してもらっていた近ツーからB個室が取れたと連絡があり、当初の予定通り旅を決行できたのです。
今年一年の楽しみを振り返る
「青春コンプレックスでは」といわれたが、そのような言葉にとらわれることなく作品を楽しみたい。
アニメ
今年、特に今年後半はなかなかTVアニメを見られなかった。これを書いている時点で秋アニメは録画しているものの11月に入ったくらいの分までしか見ていない。
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劇場版アニメも面白いものが多かった。『涼宮ハルヒの消失』は本編もよければ、OPで繰り広げられるSOS団日常の一コマもほほえましかった。日常へは戻らねばならないし、戻った先があの日常というのは贅沢なことだ。『マルドゥック・スクランブル』はヒロインの脆弱さが圧縮されきったところで第一部が終わってしまったので来年が待ち遠しい。
『true tears』と『灰羽連盟』のBlu-ray Boxを買ったはいいが、家にBlu-rayの再生環境がない。来年は地デジも見られる大型テレビとBlu-rayレコーダーをそろえたい。
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中高生を主人公にすえたライトノベルで、世間での評判がいいのに自分にはいまいちということがいくつかあって、そろそろ自分もラノベの対象読者層から外れてきたかなと思うのだけれど、青春、そしてボーイミーツガールを求める身にはラノベを離れてどこへ着地したものか見当がつかない。
マンガ
雑誌を読まなくなった。ジャケ買いはほとんどしないので、自分で読んで面白いものを見つけることはもうなく、これから人が面白いといったものを読むことが増えると思う。
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夏の初めに引っ越していった方からマンガ類430冊を譲り受けたのだがまだ読みきれていない。元からの積読もあるのでやはり新しい作品に触れる機会は少なくなりそうだ。
去年の今頃は「来年は鈴木ジュリエッタが来る」と叫んでいたのだが、今年一年で名前を見ることが増えてきたので、来年こそ広くブレークすると思う。
今年のマンガの話題といえば『っポイ!』の完結もはずせない。ちょうど私が主人公と同学年、中学3年のときに読み出し、初めて自分で買った少女マンガとなったので完結したことは非常に嬉しい。平ちゃん万ちゃん、20年間の中3生活お疲れ様でした。
映画
さまざまな活動をおざなりにして何をしていたかといえば映画に費やす時間が多かった。「午前十時の映画祭」という良企画があり、週替わりで名作洋画を流しているので通いつめている。スクリーンで見る『ローマの休日』はヘップバーンの振る舞いが隅々まで美しく素晴しかった。来年第2弾で新たな50作を上映するとのことなのでそれにも足を運ぶつもりだ。
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よかった映画を振り返るとラブロマンスの割合が多いけれど、それ以外では『インセプション』のスリルとSF設定、『ショウほど素敵な商売はない』のエンターテイナーの矜持も素晴しかった。映画館のポイントも貯まっているので来年も積極的に観ていきたい。