今年一年の楽しみを振り返る 2012

去年立てた今年の抱負に「大型のテレビを買いたい」というのがあったが、果たせなかった。去年に引き続き映画に費やした時間が大きい。

映画

ヒミズ

園子温監督作品といえばエログロという印象があったので、やや暗い気持ちで観にいったが、暗闇の中に一条の光がさすようなラストに救われた。当初「陳腐な言葉」と馬鹿にしていた台詞なのに、最終的にはそれにすがるしかなくなるというのが、自分が中学生だったころの視野の狭さを思い出させる。

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い Blu-ray & DVDセット(初回限定生産)

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9.11 テロで父をなくし、父の残した鍵の謎を追ってニューヨーク中を走り回るオスカー少年がとにかくいじらしい。彼に降り注がれる愛情の描写も素晴らしかった。

桐島、部活やめるってよ

桐島、部活やめるってよ (本編BD+特典DVD 2枚組) [Blu-ray]

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観ている最中に脂汗が止まらなかった。これはまさしく自分の高校生活だと叫びたくなる。「青春時代が夢」と「後からほのぼの思」っているところに、「胸に棘刺すことばかり」だった事実を突き出されたかのようで、つらいながらも目が離せない。

ねらわれた学園


『桐島〜』が経験に即して「正しい青春」ならば、こちらはアニメ・マンガの世界において「正しい青春」とでも言うべきか。新学期に好きな子と同じクラスになる、家が隣同士で部屋の窓が向かい合わせの幼馴染、女の子の傷ついた理由がわからない鈍感な男の子など、おなじみの甘酸っぱい展開が光あふれる景色とともに繰り広げられる。ベタな話の好きな自分は終始口元が緩みっぱなしだった。

ふがいない僕は空を見た


高校生とコスプレを趣味とする主婦との不倫が巻き起こす話。コスプレセックスのシーンから始まるが、「こんなの (コスプレ) 何が面白いの」と問われた主婦が「現実見なくていいから」と即答するあたり、「オタク」には優しくない。登場人物が苦悩し追い詰められていく中で、我関せずとばかりいる主婦の夫や、自覚していない悪意を主婦にぶつける主婦の義母の姿が異様に映る。


洋画のほうが観た数は上の気がするのだが、結果として印象に残ったのは邦画が多い。上記作品すべて主人公が中高生以下というのが私の趣味を表しているように思う。

これ以外では、ナチスドイツとユダヤ人に関する『サラの鍵』『ソハの地下水道』や、「20 秒の勇気」がお気に入りの『幸せへのキセキ』、そして圧巻のミュージカルである『レ・ミゼラブル』がよかった。『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』ではカヲル君を堪能した。


今夏の話題作として『おおかみこどもの雨と雪』があるが、個人的にはもやもやの残る作品だった。

まず、主人公である花が「つらいときも笑う」ことを信条としている点。私も気の落ち込んだときには笑い顔を作ろうとするのだが、それは花のように「笑っていればいいことがある」という前向きな理由からではなく、「泣いていてもどうしようもない」という後ろ向きな理由からだ。さらに、自分の中でも「泣いていてもどうしようもない」ということに疑いを持っており、泣きたいときには泣くべきではないかと考え、またそのような作品を好む。「つらいときに笑う」人物にはどうしてもそれでいいのかという思いが胸をよぎってしまう。

花が児童相談所の職員を追い返す場面も個人的には悲しかった。セーフティネットが、たとえ本人の拒絶が原因だとしても、セーフティネットとして機能しないという姿は見ていてつらいものがある。

また、田舎に移ってからの花の奮闘ぶりを見て、これは個別例として褒めこそすれ、決して子育ての理想や手本にしてはいけないと感じた。子育ては花のような「超人」でなくともできるものであってほしい。花の重ねた苦労、感じた苦しみを、子育てする人が追体験することのないような社会になってほしいと思う。

同様に、終盤で花が雨に投げかけた言葉も気にかかった。そんなことはない、あなたは十分に物事を成し遂げた、どうか胸を張ってほしい、あれでまだ何もというのであれば何かできる人はこの世にいなくなってしまう――と (自分のエゴではあるが) その場で声をかけたくて仕方なかった。

気になった点をあげつらったが、作品そのものは面白く、特に雪と雨の小学校生活の移り変わりを廊下から捉えるシーンは印象深い。

ライトノベル

龍盤七朝 DRAGONBUSTER

龍盤七朝 DRAGONBUSTER 〈02〉 (電撃文庫)

龍盤七朝 DRAGONBUSTER 〈02〉 (電撃文庫)

EGF マダー……はさておき、武の頂を目指す者たちの光と闇が、まるで自分がすぐそばで見ているかのように描写され、ただ圧倒されるばかり。続きが出てほしい。

東雲侑子は全ての小説をあいしつづける

東雲侑子は全ての小説をあいしつづける (ファミ通文庫)

東雲侑子は全ての小説をあいしつづける (ファミ通文庫)

東雲侑子シリーズも 3 巻で完結。英太くんもすっかり男前になり、東雲さんのかわいさにも磨きがかかって、ご馳走様というよりほかない。有美さんの弁ではないが、こんな弟がいたら鼻高々であろう。

紫色のクオリア

紫色のクオリア (電撃文庫)

紫色のクオリア (電撃文庫)

刊行は 3 年前だが読んだのは今年なのでここに記載。どこまでスケールが広がるのかわからない展開に、これが SF、これぞ SF と夢中で読み進めた。


『紫色〜』と同様に以前の刊行だが今年読んだものとして『空色パンデミック』がある。こちらは SF ではなくメタフィクションだが、どこまでが真実かわからない仕掛けの連鎖にしてやられた。中世ヨーロッパ風の世界で科学者としての錬金術師を描いた『マグダラで眠れ』も続きが気になるところだ。

マンガ

ラストゲーム

ラストゲーム 1 (花とゆめCOMICS)

ラストゲーム 1 (花とゆめCOMICS)

かっこいい男の子が女の子のために走ったり照れたりするのは最高だ。もともと 1 巻収録分のみの短期集中連載だったこともあり、1 巻は非常にきれいにまとまっている。2 巻以降大学生活が描かれるのだが、その描写がどうも高校のノリであり、大学や社会に触れたことによる世界の広がりが見えないのが気がかりである。

高杉さん家のおべんとう

高杉さん家のおべんとう6 (フラッパーコミックス)

高杉さん家のおべんとう6 (フラッパーコミックス)

小坂さん! 小坂さん! 温巳! 小坂さん! ……待ったがかけられるなら何度でも待ったをかけたい、急転直下の 6 巻だった。物語としては非常に面白いし、方向性としても仕方ないとは思うものの、残念でならない。

ひとりぼっちの地球侵略

ひとりぼっちの地球侵略 (1) (ゲッサン少年サンデーコミックス)

ひとりぼっちの地球侵略 (1) (ゲッサン少年サンデーコミックス)

高校に入学した主人公が、自称宇宙人の先輩の「地球侵略」を手伝うことになる、「すこしふしぎ」な青春譚。小川麻衣子はもともと人物のさりげない仕草の描写に長けている観があったが、『とある飛空士への追憶』の漫画化を手がけたことでアクション描写も洗練されてきたのではないかと思う。先輩のかわいらしさに加え、連載分では新キャラも登場し目が離せない。

アニメ

あの夏で待ってる』『TARI TARI』『ブラック★ロックシューター』など、中高生の青春を陰も含めて描いた作品がよかった。特に『あの夏〜』の柑菜の「禊」が記憶に残っている。

来年の抱負

積読解消・書架整理