九州南半分乗りつぶし

冬の終わりか春先かという時季に、九州へ行った。

初日

移動日。朝に京都を出て新幹線で福山まで。呉線経由で広島に着き、駅ビル内「麗ちゃん」のお好み焼きで昼食。そばのボリューム感がすごかった。

山陽本線で西へ西へと向かい、宇部線小野田線を通って日が沈むころ長門本山駅に到着。1 日 3 本しか列車の来ない駅、海越しには街の灯と船の灯。

関門トンネルを抜けたところでこの日は終了。小倉駅かしわうどんの、甘辛く煮た鶏肉が空腹にしみる。九州に来たのだからと駅前のコンビニでブラックモンブランを購入。

2 日目

にちりんの DX グリーン車日豊本線を一気に南下し宮崎空港駅まで。南宮崎に戻ったら今度は日南線に乗り換え。

終点の志布志駅で折り返し列車を待つ間、何かないかと案内板を見たら志布志市役所志布志支所の隣に大慈寺というお寺があるので寄ってみる。本堂の脇の鳥居をくぐって裏山を登っていくと小さなお堂があったり、「河童の庭」という石庭があって河童像がお出迎えしてくれたり。 思わぬ発見に満ちていて、これも旅の楽しみの一つ。

日南線を戻る途中、南郷駅で乗り換え待ち。駅前のお菓子屋さんで「なんごうマンゴー」という語呂のよさに惹かれおやつにと購入。南宮崎に戻ったら再び日豊本線を南下、都城で一泊した。

3 日目

車窓に桜島を眺めつつ鹿児島中央駅へ。九州新幹線で熊本に移動し、熊本〜三角間を特急「A 列車で行こう」で往復。車内のバーカウンターで天草焼きドーナツとデコポンハイボールを買い求め、昼間からほろ酔い気分。

再びの新幹線で久留米に向かう間、熊本駅の駅弁「鮎屋三代」をつまむ。鮎の甘露煮と焼鮎出汁で炊いたご飯の組み合わせに箸が止まらない。久留米からは乗りつぶし目的で久大本線を日田まで往復、新幹線で博多に出てはすぐ折り返し、新八代まで移動。

新八代から川内までは肥薩おれんじ鉄道の観光列車「おれんじ食堂」。沈む夕日を眺めつつディナーをいただく。車内で絞った濃厚なフレッシュジュースに始まり、噛み応えのあるブリ燻製や箸で切れる和牛スネ肉赤ワインソース煮など、地元の食材を堪能した。

川内からこの日 5 回目の新幹線で鹿児島中央日豊本線都城に戻りもう一泊。

4 日目

吉都線で吉松に出たら肥薩線に乗り換え。えびの高原を見下ろす車窓を楽しみ、人吉からは九州横断特急で熊本経由の大分まで。人吉駅の駅弁「くりめし」に舌鼓を打ち、雪をかぶった阿蘇五岳を眺めた。

大分からは特急「ゆふいんの森」で久大本線を日田まで。おやつには車内ビュッフェで購入した山荘無量塔 P ロールとカボス生ジュース。豊後森機関庫や慈恩の滝が車窓を流れる。

日田焼きそばを食べたら日田彦山線で小倉に戻る。小倉からは新幹線で一気に帰洛。行きは 12 時間以上かかって九州入りしたのに帰りは 2 時間半、新幹線様々である。

後日談

帰りの新幹線にお土産の紙袋を忘れ、着払いで送ってもらうはめになった。

今年一年の楽しみを振り返る 2013

積読解消にリソースを集中したいと思ったが満足にはできていない。

映画

東京家族

地方に住む老夫婦が東京に住む子供たちを訪ねるが、邪険に扱われる。一つ一つの場面はいかにもありそうなことなのに、全体を通してみるとファンタジーというか、これでもまだ「昭和世代が妄想する理想の家族像」に思える。そのずれも込みで面白い。

さびしんぼう

1985 年公開の映画だが今年初めて観た。前半のコメディ部分は正直空回りに思えたが、後半、特にヒロキが百合子にプレゼントを渡したときの百合子の台詞は非常に美しい (言われた側からすれば割り切れないものが残るだろうが)。同じ美しさを『風立ちぬ』の菜穂子にも感じた。

愛、アムール

パリに住む元音楽家の老夫婦、妻は病に倒れ夫は介護に明け暮れる。決して他人事でないと胸を痛めながら観た。

鑑定士と顔のない依頼人

老鑑定士が遺産の鑑定を依頼され、姿を見せようとしない依頼人 (若い女性) に惹かれていく。恋に落ち年甲斐もなく慌てふためく姿を嘲笑される主人公だが、我が身を振り返れば決して笑えず悲痛に映る。夢を見てしまったがために周囲から滑稽と思われる主人公という点では『アルバート氏の人生』にも通ずるものがある。

ルートヴィヒ

「狂王」と呼ばれたバイエルン王ルートヴィヒ 2 世の姿を描く。1972 年公開の同名映画は観ていない。芸術が世界を変えると信じ、そう振る舞うナイーブさと、それが通じず狂気に落ちていく様が哀しい。個人的には中近世ヨーロッパの上流階級の衣装を見るのが好きなので、その点からも大満足だった。


ナチス時代にバイオリンの「神童」と呼ばれたユダヤ人少年少女とドイツ人少女の交流を描いた『命をつなぐバイオリン』、愛は狂気と見せつけてくれた『地獄でなぜ悪い』『劇場版まどか☆マギカ 新編 叛逆の物語』、緊張感にあふれる SF サスペンス『ゼロ・グラビティ』などもよかった。

ライトノベル

いずれも発行は今年より前だが、今年読んだのでここに記載する。

君が僕を

君が僕を~どうして空は青いの?~ (ガガガ文庫)

君が僕を~どうして空は青いの?~ (ガガガ文庫)

夢見るようなことは起こらなかった。でも、夢にも思わなかったことなら、ほんの少し、起こった。

君が僕を 4 将来なにになりたい?

中 3 の 3 学期に転校してきた「恵まれさん」、お金に触れない生活をしているという彼女のことが、主人公は気になってしょうがない。全 4 巻。

自分でもわけのわからない思い込みに支配され右往左往する主人公の姿に、私自身の中学時代を重ね合わせ懐かしさすら感じる。手探りながら一歩一歩近づき、ようやく繋がったかに思えた糸があっさり断ち切られる様はあまりにも鮮やかで、読んでいてうめかずにはいられない。

最終巻で繰り広げられる禅問答は私の理解の範疇を超え、ちりばめられた鎖のかけらがどう繋がるのかもわからないが、今では思い出に――下手すると「よい思い出」に――なってしまったことが、当時は確かに迷いであり悩みであったのだと痛感させられる。

七姫物語

七姫物語 (電撃文庫)

七姫物語 (電撃文庫)

群雄割拠の時代、「姫」として担ぎ上げられた少女と、担ぎ上げた将軍と軍師の姿を描く中華風ファンタジー。全 6 巻中 2 巻まで読了。

1 巻の序を読んで、これは滅びの物語だと思った。夢を見て、夢を追い、夢に迫り、夢果てる――しかしその道を決して後悔はしない。そんな生き様を描いた物語だろうと。あらすじなどから推測するにそこまで悲観的な幕引きではなさそうだが、彼女と彼らの行く末を最後まで見守っていきたいと思う。

マンガ

ラストゲーム

ラストゲーム 3 (花とゆめCOMICS)

ラストゲーム 3 (花とゆめCOMICS)

完璧少年・柳の前に現れその座を奪っていったクール美少女・九条、雪辱を誓う柳の思いはいつしか恋心となってゆき……な王道ラブストーリー。2 巻で大学という舞台を生かせていないのではと不安を抱いたが、そこで登場したイケメン・相馬が 3 巻以降空回り気味な大活躍で天乃節炸裂といったところ。『片恋トライアングル』など片思いものを手掛けてきた作者の新境地に元々の強みも加わって目が離せない。

夏目友人帳

夏目友人帳 15 (花とゆめCOMICS)

夏目友人帳 15 (花とゆめCOMICS)

15 巻収録の特別篇「塔子と滋」が素晴らしい。遠くに在りて人を想うという緑川ゆきの真骨頂がいかんなく発揮され、これで私はこの作者のとりこになったのだと再認識させられる。8 月に池袋であった原画展はプロットも見られ大満足だった。


7 巻で「このままならなさ、これぞ人生」とうめいた『高杉さん家のおべんとう』、相変わらず先輩がかわいい『ひとりぼっちの地球侵略』に関しては、作者サイン会に行けた。緑川ゆきサイン会にも挑戦しようとしたのだが、こちらは徹夜で待つとのことなのであきらめた。

新規開拓はほとんどしていないが、読んだ中では、時間を飛び越え未解決事件の被害者を救おうとあがく SF サスペンス『僕だけがいない街』に描かれた親子愛が心に残る。

アニメ

ガッチャマン クラウズ

GATCHAMAN CROWDS Blu-ray BOX

GATCHAMAN CROWDS Blu-ray BOX

軽いノリでガッチャマンになり、何事にもポジティブ思考を貫くヒロインから目が離せない。とはいえ、いやらしい質問には沈黙を守るあたり聡いと感じる。また、ED 曲「INNOCENT NOTE」の歌詞をヒロインの内面ととらえると面白いという指摘には感心した。

凪のあすから

海の中にも人が暮らす世界で少年少女が繰り広げる青春群像劇。予想もつかない台詞回しとベタベタのやり取りを巧みに織り交ぜる岡田麿里脚本に 1 話目からのめり込んだ。彼ら彼女らの成長を信じられるから、痛くともつらくとも見ていられる。


凪のあすからと同じく P.A.WORKS が手掛けた青春ファンタジーRDG レッドデータガール』、京都という見知った舞台の『有頂天家族』も面白く見た。

来年の抱負

積読減少

マチ★アソビ vol. 11 と小川麻衣子サイン会

私が単行本を楽しみにしているマンガ家の一人、小川麻衣子さんのサイン会があると知り、電話したら予約が取れちゃったので徳島まで行ってきました。

京都から徳島まで、新幹線だと値が張るし在来線だとだいぶ時間がかかるしと悩んでいたら、高速バスがあると教えてもらったのでそれを利用。これなら片道 3 時間と、日帰りでもそれなりに行動時間を確保できます。

短編アニメ「桜の温度

サイン会はマチ★アソビというアニメ・ゲーム主体の総合イベントの一環なので、ほかにもいくつか廻ろうと最初に入ったのが ufotable CINEMA、「桜の温度」というオリジナル短編アニメーションを観ました。香川の田舎を舞台に、こんな田舎出ていってやると息巻く弟と、地元にとどまり家業を継ごうとする兄、そして旅館経営の家に生まれこれまた地元にとらわれた兄の恋人が織り成す物語です。田舎の呪縛とそれを打ち破ろうとして打ち破れない鬱屈、新たな世界への転機とそれをもたらした手段の是非が心に残りました。

本編 20 分、予告編を入れても 30 分ほどのはずなのにタイムテーブル上では 1 時間が取られており、別の上映も含まれているのだろうかと思いつつも、本編が終わったら周りの人がみな退場するので、私も流れに乗って外へ出てしまいました。「仁和寺にある法師」になっていないかちょっと心配です。

街歩き

川沿いには企業・団体のブースが立ち並び、アニメ・ゲーム関係が多いのですが、徳島新聞が号外を配っていたり、JALパイロット・フライトアテンダントの制服試着をやっていたりとさまざまです。

来年放映というアニメ「ハマトラ」のブース前を通りがかったら「そこの和服のお兄さん」と声をかけられ、「缶バッジ無料配布してるんで。私この一番左の子の声やります」とバッジをもらいました。家に帰ってから調べたら手渡してもらった相手は「NO.6」のヒロイン (だと思っていたら……) 役や「革命機ヴァルヴレイヴ」の生徒会の女の子役の安野希世乃さんで、見ていた作品の声優さんから声をかけられたというのに、応援の一言も言えずにその場を離れてしまった自分のコミュ力のなさを呪わずにはいられません。

小川麻衣子さんサイン会

ufotable cafe にも寄ろうかなと思っていのですが長蛇の列であきらめ、クレープをつまみつついよいよ本命、小川麻衣子さんのサイン会へ。サインだけでなく大鳥先輩のイラストもその場で描いてくれました。私はサンデー超の読み切り「インタールード」で小川さんを知ったので、それら読み切り作品の単行本化を待っていますと伝えたところ、短編集の話も進んでいるという嬉しいお返事が。手に取れる日が楽しみです。(しかしイラストを描いている途中は声をかけていいものか迷いますね。邪魔になるかなと結局ペンを走らせている間は黙りっぱなしだったのですが)

ちなみに小川さんのサインは丸めに図像化されたサインっぽいサイン。以前緑川ゆきさんのサイン会に行ったことがあるのですが、そちらは大切なものに自分の名前を書くようなサインで、サインにも作家さんそれぞれの人柄がにじみ出るような気がします。

ひとりぼっちの地球侵略 (1) (ゲッサン少年サンデーコミックス)

ひとりぼっちの地球侵略 (1) (ゲッサン少年サンデーコミックス)

中道裕大さんとのボードゲーム対戦

サイン会から出て隣のブースを覗くと、ボードゲームが所狭しと並べてあります。聞けば、奥でゲームをしているのは「放課後さいころ倶楽部」作者の中道裕大さん、中道さんに勝てばサイン入りゲームをプレゼントするとのこと。勤務先でもボードゲームが流行となっている (私がしたのは「カタン」「ドミニオン」くらいですが) 身からすれば参加しない手はないと名乗りをあげました。

待ち時間には他の待ち人と「インカの黄金」を、そして中道さんを迎えて「Pit」を。私はどちらも初めてでしたが簡単なルールですぐに盛り上がれます。残念ながらゲームでは勝てませんでしたが、京都住まいなので「放課後さいころ倶楽部」に見知った光景が出てきて面白いなどなど中道さんに伝えることができました。もともと小川さんサイン会後の中道さんサイン会に出るかどうか迷い、バスの時間の都合で断念していたので、このような形で中道さんとの交流が持てたのは嬉しい誤算です。


というわけで初めてのマチ★アソビ、それも一日だけの参加でしたが、全体として大満足でした。街中にコスプレした人がいたり痛車痛チャリが集合していたりと歩いているだけでも楽しいですし、地元が一体となって応援しているという空気が伝わってきて気持ちいいです。

佐賀・長崎を周遊きっぷで巡る

2 月に周遊きっぷ (長崎・佐賀ゾーン) を使って九州へ行ってきました。切符を手配した後に周遊きっぷ廃止の報を聞き、これが最後の周遊きっぷという思いを胸にしての旅となりました。

1 日目

初日は山陰本線で京都から下関まで。長大な上に列車本数もまばらなので、早朝に出発し特急も使ったのに九州手前で日が暮れます。

写真は米子駅の赤貝めしと益田駅のさざえ弁当。赤貝は味がしみているしサザエも歯ざわりがよく、曇天を吹き飛ばしてくれるかのようでした。

2 日目

関門トンネルを通り鹿児島本線博多駅を目指す途中、折尾駅でかしわめしを購入。そぼろごはんを一口含んだ瞬間広がる鶏の旨みに、思わず「とりだー」と声を挙げそうになりました。

博多南線にも乗ったのですが、博多南駅前をぶらついてるうちに列車を一本逃してしまい、1 時間待ちとなってしまいました。それでも何とか筑肥線唐津線を完乗、長崎本線佐世保線と乗り継ぎ、21 時前に佐世保へ到着です。

3 日目

午前中は松浦鉄道をぐるり一周して有田まで。日本最西端の駅 (モノレールを除く) であるたびら平戸口駅にも降り立ちました。駅からちょっと歩いたところに巨大カブトムシが自動車を襲うという謎のオブジェが。平戸瀬戸市場で買った地酒ゼリーはお酒の甘みに柚子が利いていて、飲兵衛でなくともいくらでもいけそうです。

佐世保駅の窓口が開いていなかったので、松浦鉄道一日乗車券は車内で購入しました。スクラッチ式の乗車券は初めて見たのですが、印字の手間がいらないので事業者側にとっても便利なのでしょうね。

有田駅で有田焼カレーを食べようとしたら駅前のお店がお休み。駅弁としても売っていたのですが、できたてが食べたいと電話で伺ったところ、歩いて 20 分ほどの本店がやっているとのことで、そちらへ直行。熱々のカレーにトロトロのチーズ、サラダ・デザートもついてボリューム満点でした。

有田駅に戻り JR の特急を待っていたところで衝撃の事実が発覚。なんと JR の切符を宿に忘れていたのです。連泊するからと一部荷物を宿に置きっぱなしだったのが仇となりました。これには背筋が凍りましたが、幸い有田と佐世保普通列車でも 30 分の距離。宿に戻って切符を無事確保です。

とはいえ、時間を大幅にロスしたのは確かです。大村線長崎本線長与経由で長崎に向かい、本当なら稲佐山に登ろうかと思っていたのですが、乗りつぶしを優先させるべく長崎駅ですぐに折り返し。かもめとみどりを乗り継いで佐世保へ戻りました。

4 日目

この日は地元の友人の案内で佐世保観光。前日までの曇天が嘘のような快晴でした。まず向かったのは眼鏡岩、穴の開いた巨岩が自然にできたものだというから恐れ入ります。弘法大師も訪れたことがあるそうで、光の差し込むさまは神秘的としか言いようがありません。

佐世保といえばやっぱりこれでしょう、というわけでお昼は佐世保バーガー。かぶりつけばパティの肉汁とベーコンの旨みが口の中に流れ込みます。

海沿いに出たら遊覧船に乗って九十九島クルーズ。雲ひとつない空を映してか海も青く透き通り、これを見られただけで盆地からはるばる出てきた甲斐があったと噛み締めます。
そのあと登った弓張岳展望台からの眺めも絶景でした。

市街に下りてきたらこれまた佐世保名物の入港ぜんざいで一服。マシュマロは水兵さんの帽子をかたどっているそうです。たいやき入りで後につかえないかちょっと心配だったのですが、すっきりした甘さであっという間にお腹に収まってしまいました。

夜は地元の魚介のおいしいお店へ。写真のイカの活き造りやアジの唐揚げもよかったですが、圧巻はカワハギの活き造り、肝を溶いたお醤油でいただけば甘みと噛み応えが一体となって口福というものを実感します。

5 日目


最終日は長崎へ。トルコライスを味わった後にメガネ橋を見物。ちょうど長崎ランタンフェスティバルの最中で、あちこちが提灯で飾られ巨大ランタンオブジェが設置されていました。

ランタンは夜に見てこそなのでしょうが時間の都合でそうも言っておれず、出島を見学したら黒いかもめで新鳥栖駅、さくらで新大阪駅、そして京都へと帰還しました。行きは九州へ入るだけで丸一日かかったのが帰りは 3 時間、つくづく思うに新幹線とは速いものです。

番外: お土産

長崎といえば福砂屋福砂屋といえば五三焼というわけで五三焼カステラをお土産に買って帰りました。卵多めのしっとりとした生地にザラメ糖の食感が混じり、カステラの概念を覆してくれる逸品です。

普段着に和服を取り入れて半年

はじめに断っておくと、以下はすべて男物の話である。

普段着に和服を取り入れて 1 ヶ月」を書いてから 5 ヶ月が過ぎた。その間、和服を着ること週 2 回のペースを維持している。秋から冬にかけて新たにそろえるものもあったので再びここに書き留める。

9 月半ばから 10 月半ばまでは、綿麻浴衣、襦袢代わりのスタンドカラーシャツ、肌着として半袖 T シャツという格好で過ごした。下はステテコ着用である。

10 月半ばともなるとそれでは肌寒くなってきたので、浴衣をやめてウール単長着 (先の記事で述べた古着) に替えた。寒さ対策にはまず首周りからということで、11 月くらいからはマフラーもするようになった。巻き方は後ろ結びだ。

11 月に入ってから長着とセットになっていたモスリン長襦袢を引っ張り出したのだが、屋外ではかえって寒く感じたのでスタンドカラーシャツに戻した。何が寒いかといえば袖口から入り込んでくる冷気である。先の記事に書いたように私は夏場でも冷房の効いた屋内では長袖を羽織るくらいで、二の腕に寒気があたるとどうもダメなのだ。夏場は常に長袖を羽織っている気分だったのが、冬場になると一転、常に半袖でいるような気分になってしまう。

その点、襦袢代わりに長袖スタンドカラーシャツを着れば、シャツの袖口で冷気がシャットアウトされるので、多少冷えた日でも快適に過ごせる。衿元が乱れていないかという心配も軽減する。もともと長襦袢よりも安く、入手しやすく、洗濯もしやすいだろうと選んだスタンドカラーシャツだが、なかなかどうして優れものであった。

また、木綿の着物もあれば秋・春に使えるかと、古着屋のネットショップで黒の木綿単長着を買った。しかし、実際に羽織ってみるとどうも僧衣のように見えてしまい、これは寝巻きにするしかないかなと思っている。洋服にせよ和服にせよ黒は難しいと痛感した。

11 月も半ばに差し掛かってくると、さすがに長着のままで外を歩くのがつらくなってくる。着物用のコートが必要かと悩んでいたが、たまたま街を歩いているときにきもの文化祭のポスターを見かけて行ってみたところ、フリーマーケットにとんびコートが出ていたので購入した。

とんびコートは腕をすっぽり覆う肩掛けがついているので、長襦袢着用時も袖口から冷気が入ることなく外を歩ける。古着ということでサイズは合っておらず、丈がだいぶ長いのだが、その分冷気も入りづらいし、新品のお値段を考えればこれで大満足だ。

コートを入手してからはウール単長着、モスリン長襦袢、綿 V ネック T シャツ、下にはステテコという組み合わせでいる。この時代屋内はどこも暖房が効いているので、袷でなく単でも普段過ごすのに問題はない。

肌着に使っているのはユニクロの綿 V ネックインナー T シャツだ。先の記事では油断すると衿元から覗いてしまうと書いたが、サイズが大きめのものを買い、着付けた後に襦袢の内側から手を入れ T シャツの襟をぐっと下げることで、その点は解決できた。半袖インナーなので肩が落ちていようと構わないという判断だ。万が一覗いてしまっても暗色の着物と違和感ないよう、色は黒を選んでいる。

冷え込みのきつい日は長襦袢タートルネックセーターに替え、ステテコの下にさらにヒートテックタイツをはいている。私の場合二の腕と同様太ももも冷えると具合が悪くなるので、和服のときは常にステテコ着用だ。

足袋は夏から同じストレッチ足袋を使い続けているのだが、冬場となるとさすがに厳しい。歩いていればまだ気が紛れるが、屋外で立ち止まると足先からどんどん体温を奪われていく。冬の足元はどうしたものだろうと思っていたところに「ヒート + ふぃっと」という足袋インナーと出会った。足袋の下にはくことで、ポカポカとまでは行かないまでも体温の奪われる感覚が劇的に軽減される。この時期の外出になくてはならないと存在となった。

帯結び

帯は最初こそ貝の口に結んでいたものの、椅子に座る機会が多いので出っ張らないほうがいいと片ばさみに替え、今はそれ一辺倒だ。

履物

履物は浴衣セット付属の下駄か、かかとのついたサンダルを使っていたが、10月ごろ、タイル敷きの歩道で浮き出たタイルに蹴つまづいた拍子に下駄の歯が欠けてしまった。そこで、店頭に浴衣やら足袋やらを並べていたお店に入り、「雪駄はありませんか」と尋ね、どういうものをと聞かれたので「街歩きに使えるような」と答えたところ、このあたりが安いでしょうと出された雪駄を購入し、以後はずっとそれを使っている。

私の場合は映画館にもよく行くので、下駄よりも音の小さい雪駄のほうが向いているのだろう。最初は鼻緒の人差し指横側にあたる部分が硬くて痛かったのだが、1 ヶ月も履いていれば慣れてしまった。下駄雪駄には左右がないそうなので、履くたびに左右を入れ替えている。

トイレ

座って用を足す際にはお腹をへこませて帯を持ち上げるが、問題はそれを戻すときだ。和服を着始めた当初は帯の上方から押し下げていたが、帯の下方から引き下げると着崩れしにくいことに気づいた。これは自分の中では結構大きな発見だった。

洗濯

先の記事に書いたように着物用洗濯ネットと中性洗剤を使い、洗濯機のドライコースで洗っている。洗うタイミングはすごく汗をかいたなと思ったときや、天下一品のラーメンを食べた後など、大体の頻度としては長着が 2 ヶ月に 1 回、長襦袢が 1 ヶ月に 1 回といった感じである。

足袋は洗濯ネットに入れて洋服類と一緒に洗い、裏返しにして干している。

裁縫

11 月半ばから使っているとんびコートであるが、気づいたら裾がほつれて布の端が垂れ下がってしまっていた。コートのほかの部分を見ても縫い目が見えず、どう縫ってあったのかさっぱりわからなかったが、「裾 縫い方」でググったところ千鳥がけというのが適しているようなので、似た色の糸を買ってきて縫いつけた。不慣れなもので縫い目の間隔も一定せず、140 cm ほどを縫い合わせるのに 1 時間かかった。

長襦袢も洗濯機での丸洗いのせいか裾がほつれたので「和裁 縫い方」でググり、こちらは三つ折りぐけで縫いつけた。しかしこれが難しく、120 cm ほどを縫い合わせるのに 2 時間を要した。

また、和服のまま横になって寝込んでしまったとき、寝返りを打った拍子に長着の後ろ身頃と袖の縫い目がビリッと音を立てて 5 cm ほどほつれてしまった。これには慌てたが破れたものは縫うしかないと、裏側から本ぐけで縫い合わせた。最初は縫い目の間隔を 6、7 mm くらいにしたのだが、隙間が見えるようだったので 3 mm くらいの間隔で重ねて縫った。

イベント

前述のきもの文化祭について調べるうちにキモノジャックというイベントのあることを知り出かけていったり、着付け講師をされている知人が古着屋巡りツアーを開くというので参加させてもらったりした。こうしたイベントで質問なり何なりすることで、男物の多い古着のお店だの、冬の足元には別珍の足袋や足袋カバーを使うだの、いろいろ教わった。

そうした場で周りを見渡すと、やはり袖口が冷えるのか、長袖 T シャツを着込んでいたり、女性だとアームウォーマーをしていることも多い。また、中華料理店で着物の女性がどこからともなく (懐から?) 手ぬぐいを取り出し、衿にはさんでナプキン代わりとしてたのには、これが着慣れた人の所作かと感心した。

訪れたお店

実際に足を運んだお店を以下に挙げる。

経費

先の記事より後にかかった費用は下表のとおり (送料は除く)。

雪駄
¥1,300
木綿単長着 (古着)
¥2,100
とんびコート (古着)
¥7,000
綿 V ネックインナー T シャツ (2 枚組)
¥990
縫い糸
¥178
角帯 (古着)
¥3,045
足袋インナー (2 足)
¥550×2
長襦袢 (古着)
¥4,200
木綿反物
¥9,000
¥28,913
先の記事との総計
¥50,829

これから

現在は着るのにかかる時間も 5 分ほどとなった。帯の長さ調整に手間取るともう 2、3 分かかってしまうので、しっかり長さの検討をつけられるようにしていきたい。

先の記事で麻の長襦袢がほしいと書いた後、ネットショップで裄・丈が気持ち長め、洗濯で 1、2 cm 縮めばちょうどよくなるくらいの麻長襦袢があったので買ってみた。もう少し暖かくなったら実際に着てみたい。

春になれば木綿がいいのではと思って古着を探していたが、木綿で男物となると古着ではそもそも数がなく、いっそ反物から仕立ててはと勧められた柄が一目で気に入るものだったので、思い切って誂えに挑戦してみることにした。仕立ては知人に紹介していただいた和裁士の方に頼むつもりでいる。

今後も古着であれ誂えであれ自宅の洗濯機で洗えることを第一とし、週 2 回、平日 1 回休日 1 回のペースを習慣化して和服を着ていきたい。

今年一年の楽しみを振り返る 2012

去年立てた今年の抱負に「大型のテレビを買いたい」というのがあったが、果たせなかった。去年に引き続き映画に費やした時間が大きい。

映画

ヒミズ

園子温監督作品といえばエログロという印象があったので、やや暗い気持ちで観にいったが、暗闇の中に一条の光がさすようなラストに救われた。当初「陳腐な言葉」と馬鹿にしていた台詞なのに、最終的にはそれにすがるしかなくなるというのが、自分が中学生だったころの視野の狭さを思い出させる。

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い Blu-ray & DVDセット(初回限定生産)

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9.11 テロで父をなくし、父の残した鍵の謎を追ってニューヨーク中を走り回るオスカー少年がとにかくいじらしい。彼に降り注がれる愛情の描写も素晴らしかった。

桐島、部活やめるってよ

桐島、部活やめるってよ (本編BD+特典DVD 2枚組) [Blu-ray]

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観ている最中に脂汗が止まらなかった。これはまさしく自分の高校生活だと叫びたくなる。「青春時代が夢」と「後からほのぼの思」っているところに、「胸に棘刺すことばかり」だった事実を突き出されたかのようで、つらいながらも目が離せない。

ねらわれた学園


『桐島〜』が経験に即して「正しい青春」ならば、こちらはアニメ・マンガの世界において「正しい青春」とでも言うべきか。新学期に好きな子と同じクラスになる、家が隣同士で部屋の窓が向かい合わせの幼馴染、女の子の傷ついた理由がわからない鈍感な男の子など、おなじみの甘酸っぱい展開が光あふれる景色とともに繰り広げられる。ベタな話の好きな自分は終始口元が緩みっぱなしだった。

ふがいない僕は空を見た


高校生とコスプレを趣味とする主婦との不倫が巻き起こす話。コスプレセックスのシーンから始まるが、「こんなの (コスプレ) 何が面白いの」と問われた主婦が「現実見なくていいから」と即答するあたり、「オタク」には優しくない。登場人物が苦悩し追い詰められていく中で、我関せずとばかりいる主婦の夫や、自覚していない悪意を主婦にぶつける主婦の義母の姿が異様に映る。


洋画のほうが観た数は上の気がするのだが、結果として印象に残ったのは邦画が多い。上記作品すべて主人公が中高生以下というのが私の趣味を表しているように思う。

これ以外では、ナチスドイツとユダヤ人に関する『サラの鍵』『ソハの地下水道』や、「20 秒の勇気」がお気に入りの『幸せへのキセキ』、そして圧巻のミュージカルである『レ・ミゼラブル』がよかった。『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』ではカヲル君を堪能した。


今夏の話題作として『おおかみこどもの雨と雪』があるが、個人的にはもやもやの残る作品だった。

まず、主人公である花が「つらいときも笑う」ことを信条としている点。私も気の落ち込んだときには笑い顔を作ろうとするのだが、それは花のように「笑っていればいいことがある」という前向きな理由からではなく、「泣いていてもどうしようもない」という後ろ向きな理由からだ。さらに、自分の中でも「泣いていてもどうしようもない」ということに疑いを持っており、泣きたいときには泣くべきではないかと考え、またそのような作品を好む。「つらいときに笑う」人物にはどうしてもそれでいいのかという思いが胸をよぎってしまう。

花が児童相談所の職員を追い返す場面も個人的には悲しかった。セーフティネットが、たとえ本人の拒絶が原因だとしても、セーフティネットとして機能しないという姿は見ていてつらいものがある。

また、田舎に移ってからの花の奮闘ぶりを見て、これは個別例として褒めこそすれ、決して子育ての理想や手本にしてはいけないと感じた。子育ては花のような「超人」でなくともできるものであってほしい。花の重ねた苦労、感じた苦しみを、子育てする人が追体験することのないような社会になってほしいと思う。

同様に、終盤で花が雨に投げかけた言葉も気にかかった。そんなことはない、あなたは十分に物事を成し遂げた、どうか胸を張ってほしい、あれでまだ何もというのであれば何かできる人はこの世にいなくなってしまう――と (自分のエゴではあるが) その場で声をかけたくて仕方なかった。

気になった点をあげつらったが、作品そのものは面白く、特に雪と雨の小学校生活の移り変わりを廊下から捉えるシーンは印象深い。

ライトノベル

龍盤七朝 DRAGONBUSTER

龍盤七朝 DRAGONBUSTER 〈02〉 (電撃文庫)

龍盤七朝 DRAGONBUSTER 〈02〉 (電撃文庫)

EGF マダー……はさておき、武の頂を目指す者たちの光と闇が、まるで自分がすぐそばで見ているかのように描写され、ただ圧倒されるばかり。続きが出てほしい。

東雲侑子は全ての小説をあいしつづける

東雲侑子は全ての小説をあいしつづける (ファミ通文庫)

東雲侑子は全ての小説をあいしつづける (ファミ通文庫)

東雲侑子シリーズも 3 巻で完結。英太くんもすっかり男前になり、東雲さんのかわいさにも磨きがかかって、ご馳走様というよりほかない。有美さんの弁ではないが、こんな弟がいたら鼻高々であろう。

紫色のクオリア

紫色のクオリア (電撃文庫)

紫色のクオリア (電撃文庫)

刊行は 3 年前だが読んだのは今年なのでここに記載。どこまでスケールが広がるのかわからない展開に、これが SF、これぞ SF と夢中で読み進めた。


『紫色〜』と同様に以前の刊行だが今年読んだものとして『空色パンデミック』がある。こちらは SF ではなくメタフィクションだが、どこまでが真実かわからない仕掛けの連鎖にしてやられた。中世ヨーロッパ風の世界で科学者としての錬金術師を描いた『マグダラで眠れ』も続きが気になるところだ。

マンガ

ラストゲーム

ラストゲーム 1 (花とゆめCOMICS)

ラストゲーム 1 (花とゆめCOMICS)

かっこいい男の子が女の子のために走ったり照れたりするのは最高だ。もともと 1 巻収録分のみの短期集中連載だったこともあり、1 巻は非常にきれいにまとまっている。2 巻以降大学生活が描かれるのだが、その描写がどうも高校のノリであり、大学や社会に触れたことによる世界の広がりが見えないのが気がかりである。

高杉さん家のおべんとう

高杉さん家のおべんとう6 (フラッパーコミックス)

高杉さん家のおべんとう6 (フラッパーコミックス)

小坂さん! 小坂さん! 温巳! 小坂さん! ……待ったがかけられるなら何度でも待ったをかけたい、急転直下の 6 巻だった。物語としては非常に面白いし、方向性としても仕方ないとは思うものの、残念でならない。

ひとりぼっちの地球侵略

ひとりぼっちの地球侵略 (1) (ゲッサン少年サンデーコミックス)

ひとりぼっちの地球侵略 (1) (ゲッサン少年サンデーコミックス)

高校に入学した主人公が、自称宇宙人の先輩の「地球侵略」を手伝うことになる、「すこしふしぎ」な青春譚。小川麻衣子はもともと人物のさりげない仕草の描写に長けている観があったが、『とある飛空士への追憶』の漫画化を手がけたことでアクション描写も洗練されてきたのではないかと思う。先輩のかわいらしさに加え、連載分では新キャラも登場し目が離せない。

アニメ

あの夏で待ってる』『TARI TARI』『ブラック★ロックシューター』など、中高生の青春を陰も含めて描いた作品がよかった。特に『あの夏〜』の柑菜の「禊」が記憶に残っている。

来年の抱負

積読解消・書架整理

普段着に和服を取り入れて 1 ヶ月

はじめに断っておくと、以下はすべて男物の話である。

きっかけ

京都という土地柄か、着付けのできる人や呉服屋に勤めている人と知り合うことがある。和服はいいよと勧められもしたが、自転車に乗れないのは困るとかトイレが面倒そうだとか言って話から逃げてきた。しかし、よくよく今の状況を考えれば、勤務先は服装規定もなく各自自由な格好で来ているし、家も会社も京都市内で公共交通機関も発達している。ここで普段着として和服を着なければ、一生普段着として和服を着る機会はないだろうと思い至った。身体的精神的に健康と言い切れず逃避先を求めていたこともあり、普段着に和服を取り入れようと決意したのである。

浴衣の入手

購入に踏み切ったのは 7 月であり、時期的にも入手しやすさからもまずは浴衣だろうが、店頭で実際に袖を通して買うかネット通販で済ませるか。迷ったものの最後に背中を押すのは深夜のテンションということで、その時間にも受け付けているネットショップの浴衣セットを購入した。下駄や信玄袋も込みで、とにかくこの一式を買えば上から下まですべて大丈夫という気軽さが決め手だった。

着付け

着付けに関しては「浴衣 男」「浴衣 帯」といったキーワードでググればいくらでも解説が見つかる。帯の締め方はアニメーション GIF で解説しているところがわかりやすかった。男の浴衣の着付けでややこしいのは帯だけだが、それも 3 回も練習すれば何とかそらで締められるようになる。

既製品なのである程度は仕方ないがどうにも浴衣の丈が長く、水洗いしたら多少は縮んだもののまだ長いので、3 cm ばかりおはしょりを作り帯の下に隠している。これがあるのでちょっと手間取ってしまい、今現在は着るのに 10 分ほどかかっている。

肌着はユニクロ綿 V ネックインナーを使っているが、着崩れてくると襟元から覗いてしまうことがあるので、もっと襟ぐりの広いものがよいかもしれない。9 月に入ってからは、後述する書籍の影響で丸首 T シャツを襦袢代わりとしている。当初下着はトランクスだけだったが、椅子に座ると浴衣と太ももがじかに接するのが気になり、ユニクロ無地のステテコを買ってきた。

外出

普段は自転車通勤だし休日出かけるときも自転車がメインだが、浴衣を着るとそうもいかないので公共交通機関か徒歩となる。京都市バス一日乗車券は常にストックしておくことにした。下駄を履いて歩くと靴のときと比べて所要時間が約 1.2 倍になる。徒歩は自転車の 3 倍の時間というのが私の中での目安なので、自転車で 10 分の距離なら浴衣のときは 30 数分歩く計算だ。

浴衣セットの中に信玄袋もあったのだが、こちらは柄があまり好みでなかったので、オープンソースカンファレンス Kyoto でもらった小ぶりのトートバッグを使っている。和服というと袂からがま口でも取り出すイメージがあったのだが、実際のところ袂に入れられるのはハンカチやティッシュがいいところで、財布やケータイなど重みのあるものを入れると袖の動きが変になる気がする。今のところは左の袂にティッシュ、右の袂にたすきがけ用の腰紐、それ以外の持ち物はトートバッグという形に落ち着いている。

時間を見るのにいちいちケータイを取り出すのは面倒だし、アナログ表示のほうが確認しやすいので、洋服のときは腕時計をはめている。しかし、和服に腕時計をはめると袖口が引っかかって切れてしまうこともあるらしいので、腕時計もバッグに入れっぱなしだ。これはやはり面倒なので、そのうち懐中時計を入手したい。懐中時計紐を使えば今よりは確認しやすくなるのではないかと思う。

雨具のことは何も考えておらず、雨の日は洋装にすると決めている。

トイレ

普段着にする以上トイレの問題を避けることはできない。用を足す前に帯を解くのは洋服で用を足す前にベルトを外しズボンを下げるのと同じという意見はもっともだが、やはり面倒くさく感じてしまうので、帯を解かずに上にずらし用を足した後に着崩れを直している。たすきがけをしておくと安心感が高まる。

とはいえ、どうにも崩れが激しく帯を結びなおすしかないというときもある。床につけないよう帯を解く端からトイレットペーパーのように丸め、その状態から結びなおす練習をしておいて損はない。それでも和式トイレやふたのついていない洋式トイレでは怖くてできないが。

洗濯と収納

浴衣を普段着にするにあたって一番調べたのは洗濯のことだ。何せ毎週着るのである。そのたびにクリーニングに出したり手洗いするだなんて面倒くさくてやってられない。家の洗濯機で洗えるのは絶対条件だ。(面倒くささは実際の労力よりも習慣化されているかによるところが大きい。クリーニングをほとんど利用しない私にとっては、洗濯機で洗って干し畳むよりも、クリーニング屋に預けて取りに行くほうが面倒くさい。)

洗濯機で洗う際には襟をしつけ縫いするそうだが、それすら億劫と思っていたところ着物用の洗濯ネットがあることを知った。たたんだ状態で固定して洗えるので大きく崩れることがない。ネットに入れて中性洗剤を使いドライコースで洗っている。

洗濯後は裏返して着物ハンガーにかけ干している。干すとき襟や前身ごろを叩いてしわを伸ばしはするが、面倒さが先立ってアイロンがけはしていない。しわが気になるときは本だたみにして寝押ししている。寝押しもググればござをかけてだのビニールコーティングされた布に包んでだのというが、そうした布もないので変な汚れがつかないようゴミ袋に浴衣を入れ、下にダンボールを敷いた状態で布団の下に挟んでいる。

勤務中は冷房の効いた部屋で座りっぱなしだし、公共交通機関も冷房がかかっているが、どうしたって外を歩く場面は出てくるし夏に歩けば汗をかく。かといって頻繁に洗濯しすぎてはすぐに布が痛んでしまうだろうから、2、3 回着たら洗濯するようにしている。

どうも不精なたちなので 1 回着たら次着るまで着物ハンガーに掛けっぱなしだ。後述するように別の着物を買ったが、こちらは着れる時期がまだ先なのでしまいこんである。といっても桐のタンスなんてないしクローゼットもしょっちゅう開閉して気密性がないから、本だたたみにしてたとう紙で包み、さらに両端から防虫剤同封のゴミ袋をかぶせてクローゼット内に寝かせた状態だ。本だたみのやり方は動画での解説がわかりやすかった。

デメリット

夏場に浴衣で過ごして一番気になるのは、細かな温度調節ができないことだ。私は普段屋外では T シャツ 1 枚でも、冷房の効いた屋内に入れば長袖シャツ (腕をまくりはするが) を羽織るようにしている。浴衣はいってみれば肌着の上に常に長袖を羽織った状態なので、屋外ではどうしても暑く感じられる。

男物ですらそうなのだから、おはしょりを作ったり補正にタオルを入れたりする女性の場合はなおさらだろう。浴衣は涼しそうに見えても決して無条件に涼しいものではないというのが着てみた実感だ。とはいえ、扇子で袖口から風を送ると脇や横腹の辺りまでひんやりしてきて、これはこれで気持ちいい。

また、ポケットがないので小物の持ち運びに困るというのもある。移動中はバッグに入れていても困らないが、ちょっと席を立った折にケータイを忘れていたということはよくある。たもと落とし和風ウエストポーチというのがあるそうなので、それらを使うのもひとつの手かもしれない。

参考

和服を普段着とするのにネット上でいろいろと調べ物をしたが、中でも参考になったのは以下のサイトだ。

Kimono-Wa-fuku:きもの-わ-ふく
普段着としての着方やトイレ歩き方座り方のコツなど、平時和服を着るための要項が充実している。読み物としても面白い。
男だって、着物がきたい。
「ふだん着物のススメ」、とりわけ「自分のサイズを知る」の簡易な測り方が2着目を買うのに役立った。

和装小物のお店で「まだ和服のことを全然わかってなくて」と言ったら、『男のふだん着物』という本をおすすめされた。早速読んだところ、フォーマルな場では洋服、和服は普段着と割り切った上で、襦袢代わりに T シャツやタートルネックセーター、足元も場合によってはスニーカーやサンダルで OK と説いている。こんな着方で大丈夫だろうかとつい萎縮してしまいがちな身にとっては、非常に勇気付けられ気の楽になる本だ。後から知ったが同じ著者による新しい書籍もあるので、そちらでもよかったかもしれない。

男のふだん着物

男のふだん着物

自由にいこう! 男着物

自由にいこう! 男着物

経費

和服を普段着とするため現在までにかかった費用は下表のとおりである (送料を除く)。和服は高価というイメージを持つ人もいるようだが、古着を利用すればそうでもないように思う。

浴衣セット (綿麻浴衣、綿角帯、下駄、腰紐、信玄袋、扇子)
¥6,480
古着着物アンサンブル (ウール単長着、ウール羽織、モスリン長襦袢)
¥2,100
綿スタンドカラーシャツ
¥3,900
綿 T シャツ
¥790
腰紐 (2 本)
¥190×2
ステテコ (2 枚)
¥790×2
ストレッチ足袋
¥1,780
ストレッチ足袋
¥1,380
着物ハンガー
¥880
着物用洗濯ネット
¥850
中性洗剤
¥298
防虫剤
¥598
書籍 (男のふだん着物)
¥900
¥21,916

これから

秋になると襦袢なしでいるのもどうかと思い、古着も扱うネットショップ長襦袢付きの着物セットを買った。しかしモスリン地の長襦袢で、羽織ってみたところ寒くならないと着れなさそうだったので、とりあえずこの秋は T シャツやスタンドカラーシャツを襦袢代わりにして過ごすつもりでいる。来春まで意志が継続していたら麻の長襦袢を入手したい。

袴にズボンクリップを使えば自転車に乗れるかもと思ったが、袴は家で洗濯できるようなものではないらしいので当分そろえるつもりはない。

今は週に 2 日、平日 1 回休日 1 回のペースで和服を着ている。手持ちからいってもこのペースが限界だろう。伝統だ決まりだととらわれることなく、自分の着やすいように着ていきたいと思っている。