今年一年の楽しみを振り返る 2015
今年も良い作品にあふれていた。年の終盤にちょっと忙しくてあまり映画を観に行けなかったのは残念。
映画
花とアリス殺人事件
親の都合で引っ越してきた中学生・有栖川徹子(アリス)は隣家の窓からの視線に気づく。『花とアリス』(2004年)の主人公二人の出会いを描く前日譚。
観ているうちに「ああ、アリスの母親ってこういう人だったわ」「花ってこういう子だったわ」と前作の情景が懐かしく思い出された。岩井俊二の叙情的な演出によって、中学生の日常に潜むささやかな非日常が鮮やかに描き出される。10年前の映画の前日譚を同一キャストで演じるという難題にアニメーションという回答を出してきたのも見事というしかない。
パレードへようこそ
1980年代、イギリス炭鉱ストのさなか、炭鉱労働組合を応援しようと立ち上がったのは同性愛者団体だった。
立場の異なる者同士が互いを認識し、理解し、尊重する。一人の思い付きから始まった行動が大きなうねりとなっていく姿に涙が止まらない。差別と偏見を乗り越え我々は進歩していくのだと強く心に刻み付けられる。
LGBTを扱った作品は、白でも黒でもない灰色を認識し尊重するという『彼は秘密の女ともだち』もよかった。
心が叫びたがってるんだ。
幼少時のトラウマで人としゃべれなくなった女子高生・成瀬順、彼女とクラスメートらが地域交流会の実行委員に任命されたことから始まる青春群像劇。
岡田麿里脚本らしいヘビーな滑り出しにのめりこみ、それぞれの気持ちを言葉にしてぶつける描写に惹きつけられた。繊細な表情の変化や、「青春は走ってなんぼ」とばかりに自転車で走り出す場面も素晴らしい。
マイ・インターン
ファッション系ネットベンチャーの社長・ジュールズのもとにやってきたインターン生・ベンは何と70歳。二人の織り成すコミカルなハートウォーミングストーリー。
個人的にネット系企業のインターンシップに参加したこともあれば受け入れる側になったこともあるので、共感する場面も多く楽しんで観られた。ネットベンチャーというラフな職場でスーツをびしっと着込みビンテージ鞄を抱え、人生の先輩としてふるまうベン (ロバート・デ・ニーロ) の姿がとにかくかっこいい。
老人のかっこいい映画という点では、ナチスに略奪された伯母の肖像画の返還を求めて老女が立ち上がる『黄金のアデーレ 名画の帰還』もあった。
サニー 永遠の仲間たち
主婦イム・ナミは、癌にかかって余命わずかの高校の友人ハ・チュナと再会し、高校時代のグループメンバーに再度会いたいと頼まれる。
2011年の映画だが今年初めて鑑賞。現在と過去とのスムーズな場面の切り替わりにどんどん惹きつけられていく。時にお互い衝突しながらも未来を信じていた高校時代と、決して幸せばかりといえない現在の対比に胸が締め付けられ、積み重なった感情がラストのダンスシーンで弾けだすようだった。
ほかにも、アップテンポで狂気を描く『セッション』、二宮和也のしゃべりと黒木華の存在感が際立つ『母と暮らせば』、おしゃれ + キュートなスパイアクション『コードネームU.N.C.L.E.』などが印象に残っている。
『くちびるに歌を』(合唱部)、『幕が上がる』(演劇部)、『ガールズ・ステップ』(ダンス部)といった青春部活物の邦画も豊作な年だった。
アニメ
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昨年から引き続いての放映。後半では声優志望・しずかの状況に一喜一憂しながらの視聴となった。夢が結実しさらにその先はと考える展開に、つい自分の仕事と照らし合わせてしまう(ちなみに私はアニメ制作会社でいうならアニメーター的な役割)。
響け! ユーフォニアム
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京都・宇治の高校を舞台に繰り広げられる青春部活物。最初は何となくで吹奏楽を続けただけの久美子が、新顧問・滝のもとで音楽への情熱に目覚めていく姿がまぶしい。「好き」と「特別になりたい」の競合など、各部員それぞれのドラマも魅力的で毎週の放映を心待ちにしていた。
マンガ
ラストゲーム
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7、8、9巻と1年に3冊も出て物語が大きく動く。相馬の奮闘っぷりはたたえてもたたえきれないほどであり、それに対して九条もよくぞ応えてくれたというところ。まさに「片思いものなら天乃忍」である。8巻カバー画像で、これまでカバー画像ではすまし顔だった九条がついに微笑みを見せた(それも柳とハートマークを作って!)のも見どころのひとつ。
福島鉄平短編集「スイミング」「アマリリス」
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『サムライうさぎ』の福島鉄平が贈る短編集。いってしまえばなんてことのない一通りの会話に過ぎないけれど、そこに至るまでの心の揺れ動きが丁寧に描かれているので、読んでいるこちらの心も大きく掻き立てられる。思春期の小さな、しかし確かな成長を何度も読み返したくなる。
ライトノベル
この恋と、その未来。
- 作者: 森橋ビンゴ,Nardack
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森橋ビンゴのシリーズがついに4巻突破! 濃密な青春に読む側はただただ悶えるばかり。4巻終盤ではついに爆弾が炸裂し、今後どうなるのか目が離せない。
来年の標語
禍福は糾える縄の如し