普段着に和服を取り入れて 2 年

はじめに断っておくと、以下はすべて男物の話である。

週 2 回くらい和服を着るようになって 2 年が過ぎた。

年間の組み合わせ

季節が二回りすると大体の組み合わせも定まってきて、今は下表のようになっている。もちろん、ある時点できっちり替えるわけではなく、季節の変わり目には混在したりする。

1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月
防寒着 とんびコート とんびコート
マフラー マフラー
長着 ウール単 綿単 麻単 綿麻単 ウール単
襦袢 モスリン長襦袢 綿立襟シャツ 長襦袢 綿立襟シャツ モスリン長襦袢
綿角帯 / 綿ポリ角帯
肌着 V ネック T シャツ V ネック T シャツ
ステテコ ステテコ
ヒートテックタイツ ヒートテックタイツ
足元 綿足袋 / ポリ足袋
足袋インナー 足袋インナー
履物 雪駄

数もそろってきたので、冬 (ウール) は 1 枚だがそれ以外の季節は 2 枚ずつ着回している。

去年の初夏、麻が涼しいと聞いたのでネットショップで古着を見ていたら、能登上布の長着があったので購入した。これが大当たりで、洗濯した後の乾きの早さと風が吹いたときの涼しさは感動物だった。

襦袢は半襦袢にしようかと思ったが、お店の人が「麻の長襦袢なら肌着なしでも着られます。暑さは綿の半襦袢と変わりません」と言うので、素肌に直接麻の長襦袢を着ている。最初はちょっとちくちくする気がしたがすぐ慣れた。

盛夏も麻・麻の組み合わせで過ごしているが、「涼しいか」と聞かれれば「風が吹けば」としか答えられない。私は大体冷房の効いた屋内にいるので問題ないが (もともと洋服のときも冷房下では長袖を羽織っている)、一日中外を歩くとなるとつらい気がする。

秋冬春

昨年の京都は 10 月に入っても真夏日になるような暑さだったので、麻の長襦袢を直接着る時期も長引いた。やっと涼しくなってきたと思ったらすぐ肌寒くなり、といってコートを出すには早く、そんなときはスタンドカラー (立襟) シャツが活躍する。

コートを羽織るようになると袖口が隠れるので下は長襦袢でもよくなるが、最高気温が 5 度を下回るような寒さの厳しい日にはヒートテックタイツ、ステテコ、T シャツ、スタンドカラーシャツの上にモスリン長襦袢、そしてウール長着と三重四重に着込んでいた。

マフラーを巻くときは端を衿元に入れている。胸の部分が直に外気に触れることもなくなり、胸から腹にかけてもちょっと暖かくなった気がして快適だ。時代劇映画を見たりするとマフラーっぽい布をさまざまに巻いていて面白く、参考になる。

春になってコートを着るか迷うときにもスタンドカラーシャツが便利だ。私の中ではすっかりモスリン長襦袢と麻長襦袢のつなぎとして定着している。

着方

最初は長襦袢・長着とも腰紐を締めていたが、半年くらいで長着は腰紐を締めず直接帯を巻くようになり、今では一切腰紐を使わずに着ている。着るときに前身頃をしっかり体に巻きつけるからか、意外とこの方が衿が崩れにくい。

順を追って説明すると以下の通り。

  1. 肌着・足袋を身に着ける。
  2. 襦袢を羽織る。
  3. 長着を羽織る。
  4. 襦袢の袖を長着の袖に入れる。
  5. 襦袢と長着の衿の背中心を合わせる。
  6. 襦袢と長着の袖口上部を重ねてつかみ、腕を伸ばして軽く振り、襦袢の袖を整える。
  7. 襦袢の右前身頃、襦袢の左前身頃、長着の右前身頃、長着の左前身頃の順で体に巻きつけていく。
  8. 右手で長着の左衿先を右腰に押しつけておき、左手で腰の辺りの背中心が大体真ん中に来ていることを確認する。
  9. 右手は腰に押しつけたまま、左手で帯を取り手先を右手に挟む。
  10. 反時計回りに帯を巻く。帯を回すのは面倒なので自分が回る。
  11. 体の前で帯を片ばさみに結ぶ。
  12. 体の前後で帯を上からつかみ、時計回りに半回転させる。最後にちょっとだけ反時計回りに戻し、お尻のあたりの背中心が大体真ん中に来ていることを確認する。
  13. 左腕を襦袢の袖の中に引っ込め、左手を肌着と襦袢の間に差し込んで襦袢の右衿をつかむ。右腕を長着の袖の中に引っ込め、右手を襦袢と長着の間に差し込んで襦袢の左衿をつかむ。それぞれつかんだ部分を後方に引くような感じで、襦袢の衿を整える。
  14. 左腕を長着の袖の中に引っ込め、左手を襦袢と長着の間に差し込んで長着の右衿をつかむ。右腕は袖から出し、右手で外から長着の左衿をつかむ。それぞれつかんだ部分を後方に引くような感じで、長着の衿を整える。

書き出してみると結構長いが、時間にすれば 5 分をちょっと越えるくらいか。急いでいるときは背中心の確認や最後の衿の調整を省略することもある。

半衿

古着の麻長襦袢には半衿がついていなかったので、自分でつけている。長着と帯を持って半衿のお店に行き、「これに合わせる半衿を探しているのですが」「気軽に洗濯したいので」と伝えると、お店の人がポリの半衿をいくつか出してくれる。その中から気に入ったものを選ぶという具合だ。

季節によってお店の品揃えも変わってくるようで、春から初夏にと 4 月に買ったものは楊柳、夏に向けて 6 月に買ったものは絽、秋用にと 9 月に買ったものはしぼのない生地だった。

半衿のつけ方」というページを参考に付けてみたところ、最初は 1 時間近くかかった。次に付けるときは縫い目を荒くしてみた (6〜7 cm くらい) ので 40 分ほどでできたが、着るときに縫い目が引っかかったりしてちょっと不安になった。ある程度縫い目が粗く、でも糸が表面に出ないようにと耳ぐけにしてみたら、かえって手間取って 1 時間半以上かかってしまった。

端から端まで一気に縫おうと糸を長く取っているから、よれて絡まないよう慎重に縫い進めることになり、逆に遅くなっているのかもしれない。縫い目の粗さなどもよい塩梅にして、もっと早く付けられるようになりたい。

足袋

着物を着始めたときにそろえたストレッチ足袋だが、1 年ちょっと、60 回ほど履いて同じ数だけ洗濯すると、さすがに親指に穴が開く。新しいものを買うに当たってストレッチでないものを試してみることにした。

靴よりワンサイズ (0.5 cm) 小さいものがいいと聞いたので、まずそれで買ってみた。お店で試し履きしたときは、ちょっときつめだけどこういうものかなと思ったのだが、実際に一日中履いているとどうも足が痛くなる。洗濯による縮みを考慮し忘れたのかもしれない。

靴と同じサイズのものを買ってみたところ、足はよいのだが足首の部分にやや隙間ができ、コハゼがちょっと外れやすい感じだった。既製品でジャストサイズのものを探すよりは、ストレッチ足袋にしたほうが楽かもしれないと思い始めている。

下着

トランクスを穿いていたのだが、自由すぎるのが気になってボクサーブリーフに替えた。ふんどしはトイレ (特に洋式トイレで座って用を足すとき) の手間が気になって、試してもいない。

洗濯

冬は月 1 回ほど、春秋は 4〜5 回着るたびに洗濯機で洗っている。汗をかく季節になってくると、長襦袢のほうは洗濯機と別に毎回洗面台で衿だけ軽く手洗いする。夏場、長着は 2〜3 回着たら、長襦袢は着るたびに洗濯だ。

面倒なので半衿を外して洗うということはなく、付けっぱなしで長襦袢ごと洗濯機にかけている。アイロンもかけておらず、干すときに衿を手で叩いたり全体を軽くひっぱたりして伸ばしている。

一度、古着で買った長着を洗濯機にかけたら 5 cm くらい縮んでしまったことがあった。幸い内揚げに余裕があったので和裁士さんに丈出ししてもらった。綿と思って買ったのだが和裁士さんの見立てでは正絹であり、家で洗うにしても押し洗いでとのことだった。

繕い物

古着だと微妙にサイズが合わなかったり、着ているうちにほつれたりするので、適宜繕っている。小学校のときの家庭科の裁縫セットを使い続けているが、洋針だと麻の生地に通しにくかったので、和針 (四の三) だけ新たに買った。

古着の麻単長着。店頭で羽織ったときはちょうどいいくらいかと思ったが、買って帰ると思ったより丈が長かったので、裾を三つ折りにして三つ折りぐけで縫いとめた。

古着の麻長襦袢。裄が短めの長着と合わせると襦袢の袖が少し飛び出してしまうので、肩上げをして裄を縮めた。

古着の麻長襦袢。ネットショップで購入したもの。ショップの写真でもシミ・黄ばみが確認できる状態であり、何度か洗濯したら肩の衿に近い部分が破れてしまったので、裏から布を当てて補強した。継ぎ布に使ったのは破れた綿 Y シャツの布地。

自転車

一度尻端折りして自転車に乗ってみたところ、袖や裾は思ったより邪魔でなかったが、かかとの固定されていない履物でペダルをこぐのが怖かったので (雨上がりの夜道だったのもあるかもしれないが)、以後乗っていない。小学生のときはビーチサンダルで自転車を乗り回していたはずなのだが。

しかしながら、浴衣の裾をちょっとたくし上げて自転車に乗っている人や、着物にモンペを穿いて乗っている人を目にすることもあるので、着物で自転車に乗ること自体は不可能ではないと思っている。

旅行

和服で泊りがけの旅行にも行った。夏に麻長襦袢 1 枚 (着たきり) で 1 泊したときは、ホテルでシャワーを浴びるのと同時に襦袢を水洗いし、バスタオルで軽く水気を吸って、室内に一晩干して翌日も着た。バスルームの洗濯紐を使おうと思ったら、襦袢の下半分がバスタブの側面に引っ付きそうだったので、結局袖に腰紐を通し、その両端を電気スタンドとクローゼットに結び付けて干した。

旅行中ずっと和服で通すのなら洋服のときと荷物の量は変わらないが、和服と洋服両方持っていくとなると荷が多くなってしまう。特に履物をそれぞれ用意しないといけないのが結構かさばる気がする。

よそ行き

持っている和服はみなカジュアルなものばかりだが、結婚式の二次会くらいまでならそのカジュアル (着流し) で参加することもある。さすがに披露宴となるとそれではまずいだろうから洋装で行くようにしている。

まとめ

もう和服を着ることが習慣というか、服のローテーションの一環という感じになっており、人からなぜと聞かれたときもそのように答えている。